要職にいる人のほうが狙われる!

東京ガス 
西山経営研究所所長 
西山昭彦 

東京ガス入社後、ロンドン大学大学院、ハーバード大学大学院に留学。社内ベンチャーで新会社設立後、法政大学大学院で経営学博士号を取得。2004年より現職。東京女学館大学教授も務める。著書は『稼いでいる人が20代からしてきたこと』など53冊にのぼる。

サラリーマンの出世の趨勢は50代に入るとほぼ決まり、役員になれる人間は一握り。だが、重要なポジションに就いていない立場ならではのメリットもある。東京ガス・西山経営研究所の西山昭彦所長はそう説明する。

「一般論としては重要なポストにいる人のほうが危ない。年寄りを追い出して新陳代謝を図ろうという圧力が働くからです。ポストにいない人間にはそうした圧力がない代わり、『この人は待遇に対してペイしているのか』という個人収支が問われます。そこで生き延びる1つの方法は、『この仕事ならあの人だね』と言われる存在になること。メジャーな仕事でなくてもいいんです。例えば経理畑の人が税理士の資格を取り税務のプロになるとか、営業マンで大口の得意先のトップと若い頃から培った強いパイプがあるとか、簡単に外せない価値のある人は定年後も残れる可能性があります」

西山所長自身、東京ガスにおいて自身の名を冠した研究所長という極めて独自のポジションを築いている。その背景には社内ベンチャーを起業し黒字を実現した経営の実践経験と、夜間大学院に通い経営理論を身につけ経営学博士号を取得したことがある。

西山所長は自身の経営実践と経営理論を結び合わせ、会社にプラスになる調査研究や政策提言を行うという「オンリーワンの価値」を生み出しているのだ。

自分ならではの価値を生み出すと同時に、それを周囲や会社に認めさせる努力も必要である。西山所長が勧めるのは個人収支表の作成だ。

「たとえば私の場合、自分が取材を受けたことによる広告効果を分析したり、自分が主宰した委員会や研修、調査をシンクタンクに委託したらいくらかかるかを推計したことがあります」

昔ほどではないものの、多くの日本企業では年功的な賃金カーブを描いており、ぼんやりしているといつの間にか不採算社員の烙印を押されかねない。50代のサラリーマンが生き残るには自分独自の価値を生み出し、待遇に対しペイしているとアピールする必要がありそうだ。

では、これまでに価値ある仕事をしていなかった人は諦めるしかないのだろうか?

それでも諦めるのはまだ早い。

「営業職であれば自社で誰も手をつけてない企業を開拓する。マーケティング職であれば理論を徹底的に学び、売り上げ増を実現する。誰も狙っていないポジションに飛び込むことで、自分の価値をあげるのです」

※すべて雑誌掲載当時

(上飯坂 真=撮影)
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