韓国では50社以上が参入し1000店舗を超えるブームに
この韓国プリは、日本でブームになるための3つの成功条件をちょうど持ち合わせている。まず、韓国の若者の間で大人気になっていて、SNS向きでもある点だ。韓国では、コロナ禍が明けて久しぶりに帰国した韓国人が驚くほど、韓国プリが大ブームになっている。韓国国内では50社以上の企業が市場参入し、プリクラを楽しむことに特化した小型店舗の形の韓国プリ専門店が1000店舗を超えているという。プラダやシャネルなどのハイブランドが、ロゴ入りフレームで撮れる期間限定ブースを売り場に設置するほどに大流行している。韓国アイドルのBTSやTWICEが、プライベートで韓国プリを撮ってSNSにアップしたことで大きくバズり、すでに日本の韓流ファンには広く知られている存在だ。
そして、韓国プリのメインターゲットは、もちろん10代後半の若い女性だ。彼女たちにとって、1回400~500円で利用できて、高画質な写真とタイムラプス動画を無料ダウンロードできる韓国プリは、お手頃で高品質なサービスとして受け入れられるだろう。
「プリクラ文化」は根強く定着している
韓国プリには、成功条件を持ち合わせていることに加えて、さらに日本でブームになりやすい2つの追い風がある。ひとつは、「盛らない」韓国プリは、近年の「盛らない」を好むSNSトレンドに合致している点だ。2020年にフランスでリリースされ、欧米のZ世代の間で人気を集める「盛らないSNS」の「BeReal」は日本でも流行を広げている。女子中高生の間で流行った「JC・JK流行語大賞」(AMF)で、2023年のモノ部門の第1位は、盛らないSNS「BeReal」だった。そのため、盛らない韓国プリは、現在のSNSの潮流にピタリと合うサービスと言える。
もうひとつは、今もなお、プリクラ文化が女子中高生を中心に根付いている点だ。日本におけるプリクラブームは、1990年代後半に1000億円の市場規模まで盛り上がった後、ブームは過ぎたものの、全盛期の1/5の200億円強の規模で下げ止まっている。スマホでいつでも自撮りできる現在でも、友人やカップルで楽しむイベント・娯楽として、プリクラを撮る習慣は根強く定着している。そのため、韓国プリは、0から新習慣を広める必要はなく、既にあるプリクラ習慣における新サービスとして、普及のハードルが抑えられる。
日本で、現在進行形で続いている韓流ブーム。その新たな火付け役の有力候補として「韓国プリ」に注目してみると、韓流のさらなる進展を楽しむことができるだろう。
【参考資料】
※1 朴倧玄(2012)「深韓流からみた韓国事情 第12回 深韓流-韓流の語源と韓流文化の考察-」『東アジアへの視点:北九州発アジア情報』国際東アジア研究センター, 23(3), 55-66.
※2 日本化粧品工業会「化粧品統計 化粧品の輸出入」(2023年9月5日)
・伊藤忠商事株式会社「繊維月報 若い消費者の心をくすぐる『韓流』の秘密」VOL730(2021年2月)
・モランボンおうち韓食「八田靖史の韓食通信 徹底考察『第4次タッカルビブーム』は日本に来るのか?」2023年10月13日
・東洋経済オンライン「『プリクラ』を女子高生がスマホ時代に撮る理由」2019年6月18日
・ニッセイ基礎研究所「2021年JC・JK流行語大賞を総括する-『第4次韓流ブーム』と『推し活』という2つのキーワード」2021年12月15日
・日本経済新聞「韓国コスメなぜ人気?」2023年7月24日
・マネ―現代「韓国ではプリクラはもう古い! 『写真館』ブームが日本に上陸」2023年2月2日
・読売新聞オンライン「「コスメにも韓流人気、フランス抜き輸入額首位…『好きなアイドルも使っている』」2023年8月4日
・AERA dot.「冬ソナから20年…コロナ禍での韓流“第4次ブーム”は必然だった? ドラマやK-POPから見る潮流」2023年10月26日
・eltha「韓国コスメはなぜ人気? 日本でのブーム背景と最新トレンドを専門家が解説」2023年7月6日
・ITmediaビジネスONLINE「“盛らない”プリクラ機が渋谷に登場、韓国発『セルフ写真館』が1回400円で」2023年7月4日
・NEWSポストセブン「キム・ヨンジャからNiziUまで…日本での韓流ブームの歴史年表」2020年8月19日
・「JC・JK流行語大賞2023を発表『○○ドリル』『不気味の谷』『ヒス構文』がランクイン!」2023年11月30日