「過去問10年分」はケース・バイ・ケース
よく塾では「第一志望校の過去問は10年分やるように」と言われるが、昨今の入試問題の変化を見ると、そうともいえないと感じている。例えば武蔵中の過去問は10年分やったところで、昔の問題はほとんど役に立たないだろう。せいぜい4年分やっておけばいい。
渋谷渋谷中は理科入試には大きな変化がなく、今年も深い思考力を問う良質な難問が出題された。一方で算数入試はめちゃくちゃ易しくなっている。こういう場合、算数はここ3年の過去問をやっておけばいいけれど、理科は10年分やっておいたほうがいいなど、教科によってカスタマイズが必要になってくる。
麻布中に関しては、これまではほとんど問題傾向が変わらなかったため、塾の勉強よりも過去問をたくさん解くことが最も効果的な学習とされていた。しかし、今年の入試問題はいつもと違って非常にマイルドだった。来年もこの傾向が続くのか、また元に戻るのかは、誰にも分からない。
学校が欲しいのは「普通にできる子」
ただ、共通して言えることは、今の中学受験の入試問題は、12歳の子どもの頭に覚えさせる内容としては、もはや限界に達しているということだ。暗記で対応できる問題をこれ以上増やして、難しくしても意味がない。必要とする知識はもうこれで十分。それよりもうちの学校はこういう学習姿勢や好奇心を持った子に来てほしいと、「求める生徒像」を明確に打ち出すような問題を出すようになってきていると感じる。
そして、それは幼いときから詰め込み学習を強いられた子ではなく、その年齢の子どもらしく普通に生活をし、普通に身体感覚があって、普通に好奇心が旺盛な子だったりする。入学選抜である以上、学力テストはするけれど、受験勉強しかやらず、世の中で起きていることにまったく関心を示さなかったり、人の気持ちを理解できなかったりするような視野の狭い子はもういらない。それよりも、これからの6年間でグングン伸びていくようなパワーのある子や余力をたっぷり残している「普通にできる子」が欲しい。そんな学校の思いが伝わってくるような入試問題に感じた。