「条件整理が必要な問題」が合否の分かれ目に
算数入試は、昨年度極端に易しかった開成中学校が少し難しくなったという以外は、全体的に問題が易しくなったように感じる。それにもかかわらず、受験者平均点と合格者平均点に間に大きな開きがあった。それはなぜか――。
合否の分かれ目となったのが、「場合の数」など条件整理が必要な問題だ。もともと筑波大学附属駒場中学校では毎年、開成中では隔年で出題される問題だが、今年はそれまであまりこの手の問題を出してこなかった麻布中までもが、このような問題を出題してきた。「場合の数」を代表するこれらの抜き出し型の難問は、とにかく地道な手作業で問題に向き合うことが求められる。長文をきちんと正確に読み、その中から複雑な条件を抜き出して、それぞれ整理してから、考える糸口を見つけるといった非常に根気のいる作業が必要だからだ。では、なぜこのような面倒くさい問題を難関校が出すのか――。
それは、「このような問題文が出たときは、この公式を使えばいい」といった上面な理解で、脊髄反射で解くのではなく、「なぜそうなのか?」「どうしてこの公式を使うと、答えが出せるのか」「あと何が分かれば答えが出せそうなのか」、自分なりに手と頭を動かしながら考える子に来てほしいからだ。つまり、「あなたはこれまでどんな姿勢で勉強をしてきましたか?」「自分でちゃんと手を動かし考えながら勉強してきましたか?」と、入試問題から受験生のこれまでの学習姿勢を判断し、ふるい落としをしているのだ。
男子難関校はどこも易化した印象がある
毎年その年の入試が終わると、各メディアから「今年の入試問題は難化したか、易化したか?」と質問される。メディア側としては、「今年はこれ」という明確な答えが欲しいのだろうが、中学受験を一言で語るのは難しい。なぜなら、私学には各学校の教育理念があり、求める人物像も変わってくるからだ。それを時代時代で変化させているのが入試問題なのだと思う。
男子御三家をはじめとする男子難関校は、今年はどこも易化した印象を受けた。特に麻布中は入試問題作成チームがまるごと世代交代したのではないかと思うくらい、普通の問題が多かった。麻布中の入試問題といえば、独自の路線を貫き、毎年「ほほう、今年はこう来たか! さすが麻布だな」と唸らせるものがあったが、残念ながら今年はそれが少なかった。