痛みを伴う改革に進むか、円安・物価上昇を放置するか
だが一方で、金利が本格的に上昇しないことが、日本の構造改革を遅らせていると見ることもできる。円安になってアジアや新興国などの企業を含めて、日本の企業を買収したいという要望が増えている。こうした海外の資金を受け入れていくことで、日本企業が復活するきっかけにすることも考えられるが、日本の中堅企業の経営者のマインドがそれに追いついていない。海外からの資本を受け入れることに「ハゲタカ」「身売り」といったマイナスイメージを持っている。
また、大規模金融緩和によって新たな資本を受け入れなくとも、地銀などが貸し続けてくれるという「緩い環境」が、経営改革しなくとも何とか生きていける状況を生み出している。結果、世界に通じる技術などを持っているにもかかわらず、門戸を閉じたまま衰退していく中堅中小企業が少なくない。金利を一気に上げれば、そうした企業に強い痛みを与えることになるわけだ。
金利上昇で痛みを伴う改革に進むか、大規模緩和を続けて円安、物価上昇を放置するのか。金融政策が今ほど将来を左右するときはない。