“終わったこと”に心を注がない

私たちは、時間を“流れ”として考えることがあります。そう考えるなら、過去はどこかへ流れ去ってしまったので、過去に縛られずにすむはずです。

それなのに過去に縛られる人が多いのは、時間が積み重なっている感覚も持ち合わせているからでしょう(私は積み重なる感覚しかありません)。

自分の人生の頂点(現在)の下には、膨大な経験の積み重ねがあります。過去に縛られてしまう人は、下層に輝いていた時期や、逆に嫌なことがあるのでしょう。

昔は良かったと過去の栄光をふり返れば、現在の自分が惨めになります。惨めさに埋もれて、これから何をしたいか、何ができるかを考えられないので未来を失います。

嫌な思い出に縛られて、その出来事を現在の惨めさの原因にすれば、そこに安住することになるので、やはり未来を志向する気が起きません。

「あの栄光は、あれで素晴らしかった。しかし、今の私にはやることがある」「あんな嫌な思いは二度としないぞ」と割り切り、過去を踏み台にして、未来につづいている階段を上っていきたいものです。

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良くも悪くも「明日は明日の風が吹く」

「下手の考え休むに似たり」は、囲碁や将棋の世界で、下手な人がいくら長く考えても休んでいるのと変わりなく、何の効果もないことをいった言葉だそうです。

これと似たことを、元ニッポン放送の村上正行アナウンサーのワークで指摘されたことがありました。見て感じたことをすぐに言うワークでした。

「三歳の子どもが床に座って、画用紙に夢中で絵を描いています。クレヨンが画用紙からはみ出しても気にしません。それを見て、何と言いますか。名取さん!」

気の利いたことを言おうとして「えーと」と考えていると、東京下町育ちの村上さんらしい言葉が飛んできました。「あのね、悪い頭は使っちゃダメです」。

また、支援学級の先生をしている友人は、「“今日できることを明日するな”って言うけど、支援が必要な子どもたちには“明日できることは今日しなくてもいいんだ”と伝えることがしばしばある」と教えてくれました。

その日のことは棚上げにして、今日は悪い頭を使わず、明日の風に自分がどう対応するかを楽しみにする好奇心と勇気があれば、楽になることがたくさんあるものです。