本人が自分の特性を知って対応していくことが必要

ADHDには薬物治療が有効だ。しかしそれも、「根本治療にはならない」と、冒頭の仮屋氏が言う。

「例えば集中力を持続させるために薬を飲むと、覚醒レベルが上がり、感情が安定します。いくつかの薬がありますから、家庭や職場などで目立つ問題点をコントロールしてあげることはできるんです。ただ根本治療としては、本人が自覚して、自分でそれを学習するという姿勢が大切です。当院に通う発達障害の患者さんで大学教授の方がいますが、長年、テーブルが書類だらけで食事を取る時にはそれを少しだけ寄せて片隅で食べるような状況です。それでも本人がこれがおかしくないと思えば、対人関係もそうですが、変わらない。診察では患者さんとの会話で社会的に問題と感じた部分は指摘できますが、あとは本人が自分の特性を知って対応していくことが必要だと思います」

仮屋暢聡医師

自身が発達障害だと思わない人も少なくないという。仮屋氏が監修した『Newton別冊 精神科医が教える 心の病の説明書』(ニュートンプレス)には「成人期のADHDチェックリスト」が掲載されている。正確に判断するためには医療機関の受診が必要だが、下記6つの項目を5段階評価(まったくない、めったにない、ときどき、頻繁、非常に頻繁)で回答した時、「頻繁」か「非常に頻繁」が4つ以上あてはまる場合はADHDに該当する症状をもっている可能性が高いという。

*成人期のADHDチェックリスト

1.物事を行うにあたって、難所は乗りこえたのに、詰めがあまくて仕上げるのが困難だったことが、どのくらいの頻度でありますか。

2.計画性を要する作業を行う際に、作業を順序立てるのが困難だったことがどのくらいの頻度でありますか。

3.約束や、しなければならない用事を忘れたことが、どのくらいの頻度でありますか。

4.じっくりと考える必要のある課題に取りかかるのをさけたり、遅らせたりすることが、どのくらいの頻度でありますか。

5.長時間座っていなければならないときに、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることが、どのくらいの頻度でありますか。

6.まるで何かにかり立てられてるかのように過度に活動的になったり、何かせずにいられなくなることが、どのくらいの頻度でありますか。

Newton別冊 精神科医が教える 心の病の説明書』(ニュートンプレス)より

Aさんは現在、東京都内にある職場近くの賃貸住宅にひとり暮らしをしている。だが今後は、「仕事が休みの日に時々片付けて、そのうちここ(実家)に住みたい」と口にしていた。もし私がAさんの立場なら、あの家に住みたいとは思わないだろう。片付けるのに途方もない労力が必要だと感じるからだ。いや、たとえどんなに見た目がきれいになっても、一度でもあそこまで不衛生になった場所に住むのは心理的に難しいかもしれない。「時々片付けて住もう」と思えるということは、Aさんはあの汚さに抵抗がないということだ。もしかすると現在のAさんの住まいも、あの実家と大差ないのかもしれない。

今回は偶然、ゴミ屋敷であることが発覚したが、もし私たちのような第三者の介入がなければ、あの家の状況が変わることはなかっただろう。家族や親戚など関係する人たちが「異常な状況」と認識しなければ、何も変わらない。そうして、どんどん物が増えてしまう家は決して珍しくはない。おそらく国内に820万戸あるという空き家の中にも、かなりの数のゴミ屋敷があるのだろう。あなたの実家、あなたが知る空き家の室内は、大丈夫だろうか。

*空き家になった「実家」を片付ける際のアドバイス

1.戸建ての場合、空き巣対策として外回りの植木の手入れをしておく

2.重たい家具よりも、衣類や雑品、食器類から日常のゴミ回収日に自分で処分

3.未使用のもの、まだ十分に使えるものがあれば、もらい手を探し、引き渡す

4.リサイクルできる品は信頼できる店で買取の見積もりを行い、引き取ってもらう

5.業者に頼むと高くなるため、粗大ゴミ回収を利用して大物ゴミもできる限り減らす

※孤独死現場の第一人者で生前遺品整理会社「あんしんネット」事業部部長の石見良教さんより

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