睡眠時間の短い人は心筋梗塞のリスクが1.2倍高い

また、8時間以上の睡眠時間は、高中性脂肪血症およびメタボリックシンドロームのリスクを減少させました。加えて、2019年に報告された研究(※20)では英国の心血管病になったことがない46万1347人以上を中央値7年間追跡分析し、睡眠時間と心血管病の関係について調べられています。

その結果、毎晩6〜9時間睡眠する人と比較して睡眠時間の短い人は1.2倍、心筋梗塞のリスクが高かったのです。

そして、睡眠不足は免疫とも関係しています。面白い研究があります(※21)。153人の健康な人の14日間の睡眠時間と睡眠効率(ベッドにいる時間のうち寝ている時間の割合)を評価したあとにライノウイルスという風邪のウイルスを投与され、どのように風邪になるか観察されました。

その結果、睡眠時間が7時間未満の人は、8時間以上の人に比べて風邪を発症する可能性が2.94倍高かったのです。睡眠効率が92%未満の人は、98%以上の人に比べて風邪を発症する可能性が5.5倍高かったということです。

ちょっと人体実験に近い研究ではありますが、睡眠不足だとウイルスに暴露された際に風邪を引きやすいという重要な内容だと思います。

そういったこともあって睡眠不足は死亡リスクも上げることが報告されています。16の研究から138万2999人についてアンケートで得られた睡眠時間と死亡について評価した報告(※22)では睡眠時間が短いと死亡リスクが高くなると関連していました。

逆に寝すぎも死亡リスクの上昇と関係していると言われていますが、今のところはっきりとはしていません。適切な睡眠時間と睡眠の質が非常に重要だと言われています。

よい睡眠を得るために重要な睡眠環境

さて、ここまでで睡眠の大切さについてお話ししてきました。ここでは睡眠不足をどのように改善させていくのかについてお話しします。

まず、睡眠不足について認識することです。アメリカ睡眠学会(※23)によると、睡眠不足症候群とは「日中に眠気を感じる」「睡眠時間が年齢に合わせた適切な睡眠時間より短い」「3カ月以上ほぼ毎日続く」「忙しくない朝の時には普段より睡眠時間が延びる」「睡眠時間を増やすと日中の眠気が改善する」「他の原因が考えられない」といった診断基準があります。

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中にはもともと睡眠時間が短い人もいて、そういう人は睡眠時間が短くても日中の眠気などを感じません。ただ、そういった人を除き、成人の睡眠時間としては7時間以上というのがひとつの目標となっています(※24)。さて、こういった十分な睡眠時間が確保されていても日中の寝不足を感じる場合、睡眠の質の低下が存在すると考えます。

睡眠の質の低下については先述のように病院でポリソムノグラフィーなど詳しい検査をしてもらうのが一番正確です。病院で評価してもらう場合、病的睡眠障害の可能性についても評価してもらえます。

病的睡眠障害には先述した睡眠時無呼吸症候群の他にレストレッグス症候群や周期性四肢運動障害などがあります。これらはそれぞれの病気に合わせた治療法がありますので、生活を変えただけでは改善しません。病院ではまずはこういった病気がないかについて確認できますので、病院で評価してもらうことについても重要であろうと考えます。

ただ、近年はウエアラブルデバイスでも簡易的に睡眠の質について評価が可能です。かつてはポリソムノグラフィーよりは誤差が大きかったようですが、最近のものはポリソムノグラフィーと大きく変わらない評価ができると言われています(※25)ので、睡眠の質を評価する上で簡易的に見るのにはよいと思われます。

さて、よい睡眠を行うのには睡眠環境を整えることが重要です(※26)。まずは睡眠のスケジュールを守りましょう。休みの日でもそうじゃなくても同じ就寝時間、起床時間を守ることは重要です。また、寝る前の行動も重要です。就寝の2〜3時間前には薄暗い光にして、少なくとも1時間前にはパソコンやスマホなどの使用をやめておきましょう。

これにはモニター画面などを見ることによって、睡眠に関係するメラトニンというホルモンが出にくくなることが関係していると言われています(※27)。また、眠れない時に時計を見るのもやめましょう。時計を見ることで眼が覚めやすくなります。