こうしてみると過去のダイヤ改正と比べて、今回の京葉線の速達電車の廃止・大幅削減という方針は異例であることが分かる。

京葉線と競合するのは同じJR東日本の総武線だ。近隣には京成電鉄もあるが、都内のターミナル駅は京成上野駅(日暮里駅でJRと接続)であり、JRを利用する房総半島付近の通勤客等の新たな選択肢になるとは思われない。

そうした中で、JR東日本の京葉線ダイヤ改正の本当の目的は通勤快速・快速の特急化だという指摘がある。現行ダイヤで蘇我駅を7時44分に発車する東京行の通勤快速はダイヤ改正で各駅停車となるが、この時間帯に7時39分発の有料の特急わかしお4号が新設されることに注目が集まっている。

これについて、「通勤快速の廃止は事実上の有料特急化ともいえる」という鉄道評論家などの意見がある。

ダイヤ改正の狙いは「速達電車の特急化」

JR東日本は近年、首都圏を走る通勤時間帯の速達電車の特急化を目指している。

例えば、東海道線における湘南ライナーと呼ばれる座席定員制の快速電車は、2021年3月の春のダイヤ改正で特急「湘南」に変更。2019年3月のダイヤ改正では、中央線におけるホームライナーが特急「はちおうじ」、特急「おうめ」に変更されるなどした。

特急「湘南」(画像=MaedaAkihiko/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

「特急化」の内実は、速達電車の値上げである。従来のライナーでは速達料金ではなく、着席保証料金として510円を徴収していた。しかし、特急への格上げで50km以内は760円、100km以内は1020円の特急料金が必要となった。このように、利用者にとってみればかなりの値上げになった(ともに現在の事前購入料金。えきねっと予約では100円引き。運行初期はさらにキャンペーン割引を実施)。

今回取り上げる京葉線では有料のライナーの運行はなく、従来から特急「わかしお」が運行されている。これが3月のダイヤ改正で通勤快速等の廃止に合わせて増発される。また、わかしおを含む房総特急・成田エクスプレスは、このダイヤ改正にあわせて料金体系を変え、従来の指定席・自由席の区分をやめて、全席指定席として特急「湘南」などと同様にする。

この点からも、快速・通勤快速利用者の特急への移行を目指していることは明らかだろう。

特急「わかしお」(画像=Cassiopeia sweet/PD-self/Wikimedia Commons

特急料金を払っても4分遅くなる

しかしながら、この「速達電車の特急化」で消費者にはどんなメリットがあるのだろうか。筆者が疑問視する理由の一つが「これらの特急はあまり速くない」ということだ。

特急とは特別急行のこと。すなわち、特急料金とは特別に速い速達性への対価である。しかし、首都圏を走るこれらJR東日本の特急は「名ばかりの特急」が多く、今回増発される「わかしお」も同様だ。

現行の通勤快速では、蘇我―東京駅間を42分で結んでいるのに対して、3月のダイヤ改正で増設される「わかしお4号」の所要時間は46分となる。いままで、普通運賃を支払うだけで42分で東京に到着できたのに、改正後は特急料金を払っても4分延びる。