デザイナーズコラボは20年近い歴史がある

ファッション衣料にあまり興味の無い人にとっては、低価格ブランドとデザイナーズブランドとのコラボというと、真っ先にユニクロが思い浮かぶのではないかと思いますが、デザイナーズブランドとのコラボの歴史はH&Mのほうが古いのです。

H&Mは2004年に故・カール・ラガーフェルド氏とのコラボラインを発売しました。カール・ラガーフェルド氏というと、自身のブランドもさることながら、長年「シャネル」のデザイナーも担当していたということは非常に有名なのではないでしょうか。このコラボはH&Mが日本に本格上陸する前の商品となります。

ユニクロのデザイナーズコラボというと、2009年の「+J」が嚆矢こうしだと思われている節があるのを感じますが、こちらも歴史は意外と古く、2006年からすでに「デザイナーズ・インビテーション・プロジェクト」というコラボ企画をスタートさせています。H&Mに遅れること2年。この取り組みは個人的な推測ですが、おそらくはH&Mの2004年のラガーフェルド氏とのコラボをヒントにしてユニクロ内に取り込んだものだと思われます。H&Mは今から19年前、ユニクロは17年前からデザイナーズコラボに取り組んでいたということで、結構長い歴史があるのです。

H&Mとコムデギャルソンのコラボで沸き起こった物議

ユニクロが「+J」を発売する1年前の2008年11月、H&Mはコムデギャルソンとのコラボラインを発売しました。ご存じの通り、日本人の大御所デザイナー、川久保玲氏が手掛ける世界的著名ブランド「コムデギャルソン」とのコラボは、H&Mからすれば「本格的な日本上陸記念」という意味合いもあったのではないかと思います。

その後、2009年と2012年と川久保玲氏がメディア上で低価格衣料品への非難を繰り広げたため、その言動不一致ぶりには一部からは「あきれた」という声も上がりました。私も同様の思いです。しかし、川久保氏は「それはそれ、これはこれ」と考えていたのではないかと推測できます。実際に2012年の朝日新聞のロングインタビューにはこんな一節があります。

――そのH&Mと数年前にコラボレーションをしました。葛藤はなかったのですか。

「全然なかった。たった2週間のイベントでしたが、私が手がける『コムデギャルソン』の服がマスマーケットにどうアピールできるかに興味があったので」

やはり「それはそれ、これはこれ」という考え方でH&Mコラボに臨んだのだろうと考えられます。