これまでプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年3月30日)
103万円、130万円、150万円……パートなどで働く人からは「いろいろな壁があって、結局いくらで働くのがオトクなの?」という声が絶えない。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは「損益分岐点について私は、もし働ける環境なら、社会保険料の負担や控除を気にせずにしっかりと働いたほうが良いと考えています」という――。

※本稿は、黒田尚子『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか「自然に貯まる人」がやっている50の行動』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

103万円の壁にいつまでもこだわる人は損をする

パートで働く妻が大きな関心を寄せるのが「103万円の壁」問題。これは妻の年収が103万円を超えると、妻自身に所得税が発生。夫の年収についても、配偶者控除から配偶者特別控除に切り替わり、妻のパート収入が141万円以上になるまで段階的に減少したり、配偶者手当などの優遇がなくなったりして、かえって損をするというものです。

それが、2018年分(住民税は19年度分以後)から、配偶者控除・配偶者特別控除の改正が行われ、所得控除額38万円の対象となる配偶者の年収の上限が103万円から150万円に引き上げられました。新たに「150万円の壁」ができたのです。

ただし、150万円を超えても、妻のパート収入が約201万円まで段階的に配偶者特別控除が適用されるので、これまでと同じように一気に手取りが減るわけではありません。

実は、この改正が議論されている間、配偶者控除等を廃止にする案も検討されていました。これらの“恩恵”が妻の就労意欲を阻害し、控除というメリットがなくなれば、もっとバリバリ働く妻が増えるに違いないと考えられたからです。

ところが、蓋を開けてみると、現行制度は維持。控除対象となる妻の年収の上限が引き上げられ、ちょっとだけ額を高くした新たな壁が増えただけでした。国としては、「バリキャリとまではいかずとも、150万~170万円くらいで働くパート妻を増やしたい」という思惑なのでしょう。

ただ、納税者本人である夫の年収によっても、控除適用の可否が変わるという要素が加わり、しくみは複雑に……。改正では、夫の年収が1120万円を超えると段階的に配偶者控除・配偶者特別控除の額が減らされ、1220万円を超えると、配偶者特別控除だけでなく、その手前にある配偶者控除も受けられなくなります。