部下の「強み」を活かすには…
「Q12」の質問は、マネジャーの仕事にかかわるものが多い。「Q1:自分が何を期待されているのかを知っている」でいえば、マネジャーが本人に期待することを伝えていなければ、社員の自己評価は低くなる。社員のエンゲージメントは、マネジャーの行動によって変化するということだ。
そのためギャラップ社では、各質問に対応するマネジャーの役割や行動を示している(出典=ギャラップ『まず、ルールを破れ』日本経済新聞出版)。例えば、以下のようなものだ。
【質問】
Q4:この7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
【マネジャーがとるべき行動】
□いい仕事をしたという評価を望ましい成果とそのもとになっている才能と結びつける
□個人の強みに着目する
□成果と結びつけて評価する
□褒めるべきタイミングを理解する
【質問】
Q6:職場の誰かが自分の成長を促してくれる
【マネジャーがとるべき行動】
□部下の適性を見出す
□才能とスキル・知識と区別する
□部下が強みを育てることを助ける
□部下の強みに適した仕事を与える
なお、上記の「才能」「スキル」「知識」について、ギャラップ社では次のように定義している。
スキル:仕事のノウハウ
知識:事実や経験
「辞めていく人は会社を去るのではない」
優れたマネジャーには4つのカギがあり、「Q12」のうち6個の質問が対応している。
(2)要求を設定する
(3)動機づけをする
(4)人を育てる
質問が50以上もある日本の調査では、マネジャーの具体的な行動に落とし込めない。変革に結びつかないサーベイのみで終わってしまうのだ。
ギャラップ社の講座で、よく語られるフレーズがある。
「辞めていく人は会社を去るのではない。部下に関心をもたないマネジャーから去るのだ」
マネジャーが特に強く関心を向けるべきは、部下の才能や強みだということだ。
近年は日本でも、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換を図るため、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を作成する企業が増えてきた。ただし、職務内容を文書化するだけで終わっているケースが少なくない。
“個人の強み”を活かすアメリカ企業では、あるポジションを設けると、職務内容とともに担当者に必要な才能、強みも明らかにする。採用では、求められる才能、強みを意識して人材を探す。採用後は、もともと必要な才能、強みをもつ人材だから、仕事が好きでパフォーマンスもエンゲージメントも高い。ジョブ・ディスクリプションによって、個人と会社がともにハッピーな状況になる。
ジョブ・ディスクリプションは、才能や強みから人材を見つけ出す有力なツールになる。日本では、ジョブ・ディスクリプションの本質を理解して運用している企業がまだまだ少ないようだ。