シェアを少し奪われても、マーケットの拡大はありがたい
競合にすれば、マーケットシェアを少し奪われようが、マーケットが3000億円から4000億円になったら、こんな嬉しいことはない。しかもプレミアム市場を開拓してくれたのです。だから、「やってくれてありがとう」だったと思うのです。
もし、エッジも立てず、プレミアムも狙わず、単に新商品を出して、競合内でシェアの食い合いをしていただけなら、お叱りを受けたかもしれない。しかし、市場を大きくし、しかもプレミアムマーケットを創造できたというのは、マーケット関係者からは歓迎されたのです。
この成功によって、私は2020年に日経クロストレンドの「マーケター・オブ・ザ・イヤー」大賞に選んでいただきました。実際にはチームが作ったのだと声を大にして言いたいですが、それでも選んでもらったのは、単にシェアの食い合いをするのではなく、新しいマーケットを開拓できたからだと思っています。
「9%の『鬼レモン』が出ました」にはしなかった
少し時計を進めてしまいましたが、九州のテストマーケティングで見つけたヘビーユーザーに支持されていないという課題には、もちろん対策を打ち出しました。ヘビーユーザーからの支持が大きくならなかったのは、テレビCMに若い女性を使ったことに加えて、高いアルコール度数のラインナップがなかったからだとわかっていたからです。
「檸檬堂」が出していたのは、3%、5%、7%の3種類。そこで9%の度数の製品を作ることにしたのです。これが、「鬼レモン」でした。
普通なら、「9%の『鬼レモン』が出ました」とうたう広告を作りますが、そうはしませんでした。
「鬼レモン」を打ち出すにあたり、徹底的にリサーチをしたのです。そして、データを取って分析しました。3%、5%、7%、9%のアルコール度数があったとき、どんなふうに製品を選ぶのかを聞いたのです。
それでわかったのは、「実は気分によって選んでいる」ということでした。期待されていたのは、3%、5%、7%、9%のラインナップが揃っているということであって、「9%が出ました」という打ち出し方ではないとわかったのです。