三浦雄一郎の考案した「ヘビーウォーキング」の中身

50歳を超えてからは、「歩く」ことがトレーニングの基本になりました。

ランニングは脚への負担が大きいんですね。とくにぼくは膝を痛めていたものですから、走ると必ず膝が腫れました。

ということで、もうトレーニングはできない体になってしまったのかなと落ち込んでいたのですが、あるとき、本を詰め込んで10kgくらいになったリュックサックを背負って、家のまわりを歩いてみたら、無理なく歩くことができました。「よし!」ってことで、それからだんだん歩く距離を延ばしていきました。

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また、当時は、東京・原宿に事務所があり、そこをベースに講演会などの仕事もしていました。

たとえば、新幹線で東京駅に帰ってくると、タクシーに乗って、途中の赤坂で降りて、原宿まで歩く。それが“エスカレート”してくると、東京駅から原宿まですべて歩いてみたりと、トレーニングとして意識的に長く歩くことを自分に課しました。

重さも増やしていきました。背中にリュックサックを背負う代わりに、足首にアンクルウェイト(重り)を巻いて歩くのです。最初は片足1kgから2kgでしたが、徐々に3、4、5kgと増やしていき、最後は10kgにも挑戦しました。

これをぼくは勝手に「ヘビーウォーキング」と呼んでいます。

歳を重ねたら「歩く」ことがトレーニングの基本

普段の仕事の行き帰りはもちろん、結婚式に出るときも、これは外しません。

しっかりスーツを着込んでピカピカに磨いた靴を履き、でも人知れず、足首には重りを巻いているなんて、おかしな姿だと思うでしょうね。でも、日常生活すべてがトレーニングと考えていましたから。

そうこうしているうちに、年齢と反比例するように体力は上がってきて、膝が痛い、腰が痛いという痛みが、どういうわけか全部吹き飛んでしまった。「ヘビーウォーキング」は足腰の治療にもひと役買っていたというわけです。

おかげで、70歳からの三度のエベレスト登頂への挑戦のときも、とくにジムに通って特別なトレーニングを受けたわけではなく、すべてこの重りをつけて歩くトレーニングを基本にすることで可能になりました。

もっとも、重りは日々の体調に応じて変化をつけました。今日は疲れたから3kgにしようとか、今日は頑張って8kgにしようとか、その日の気分、コンディションしだいで決めていました。

ぼくはエベレストに登るという夢のために、重りをつけて歩きましたが、歳を取って足腰が弱ってきた人には、毎日歩くだけでも効果的だと思います。

とにかく、歳を重ねたら「歩く」ことがトレーニングの基本だと思います。