歳を重ねても体力を保つにはどうすればいいか。プロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎さんは「ぼくは50歳を超えてから足首にアンクルウェイトを巻いて歩く『ヘビーウォーキング』を欠かさず行った。すると年齢と反比例するように体力は上がり、膝や腰の痛みが全部吹き飛んでしまった。70歳からの三度のエベレスト登頂への挑戦のときも、ジムで特別なトレーニングを受けたわけではなく、すべてこの重りをつけて歩くトレーニングを基本にすることで可能になった」という――。(第2回/全5回)

※本稿は、三浦雄一郎『90歳、それでもぼくは挑戦する。』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

足に用具を装着するイメージ
写真=iStock.com/Gabriele Maltinti
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重荷を担いで山に登る歩荷の仕事と空き時間のトレラン

トレーニングの原点は、山ごもりで体を鍛えた武者修行時代にあります。

北大スキー部時代を経て、日本のアルペンスキー界から追放されたことをきっかけに、日本アルプスの立山にこもりました。

歩荷ぼっかの仕事に入れてもらって、毎日荷物担ぎの仕事です。本格的に足腰が強くなっていったのはこのころからです。

歩荷とは、背負子しょいこに重荷を担いで人力で運ぶ仕事で、強力ごうりきとも呼ばれます。立山では主に山小屋の食料や燃料などを荷揚げしました。

少ないときで40から50kg、多いときで100kgもの重荷を背負ってひたすら山道を登り、山小屋で荷物を下ろすと、帰りは羽が生えたように軽々と駆け下ります。

仕事を終えてちょっと昼寝をしても、まだ日没までは時間がある。そこでふたたび山道を駆け上がり、グルッと稜線りょうせんを走って帰ってくる、ということを夢中になってやっていました。いまのトレイルランニングの元祖ですね。

やはり、重荷を担いで山に登る歩荷の仕事と、空き時間のトレランが、ぼくにとっては一番いい足腰のトレーニングになりました。

その後、アメリカに渡って世界プロスキー選手権に出場するのですが、日本のスキー界を追放されて以来、スキーレースから三、四年遠ざかっていたにもかかわらず、世界のベスト3まで食い込めたのは、この歩荷とトレランのおかげです。