60代で引退したらどうするか。すでに青写真はできています。私の夢は「ソフトバンクアカデミア」をつくり、そこの校長先生になることです。プラトンが自らのアカデミアの入り口に「幾何学を知らぬ者、この門をくぐるべからず」と掲げたように、私も「デジタル情報革命を志さぬ者、この門をくぐるべからず」と掲げたい。高い志を持った、ソフトバンクグループの経営陣を育てる学校をつくりたいのです。ちなみにソフトバンクのイコールサインのロゴマークは、龍馬の海援隊の2本線の旗印からきているんです。「志高く」生きた龍馬に憧れる私が決めました。私は、金も名誉もいらない。ただ、人に志を残したい。

このように考えるのは、やはり早く志を持った人間は強い、という信念があるからです。早く志を持てば、人生をムダにせず生きられます。どんな人間も一生懸命に生きていますが、自分の登りたい山を定めずに歩くのは、さまようにも等しい。これは非常にもったいないことです。でも、実は99%の人が自分の山を決めかねたまま、なんとなく生き続けているのではないでしょうか。だから迷いも生まれるし、「自分の人生、こんなはずじゃなかった」なんて愚痴も出る。では、どんなはずだったのか。

自分の可能性を生かしきって生きるには、エネルギーを注ぐ価値のある、人生のテーマが必要です。高い志が必要です。時間がかかってもいいから、一度そのことについて悩みぬくこと。それが自分自身の、人生の夜明けになるはずです。

ソフトバンクと孫社長の歩み

※本稿は2010年3月29日に東京国際フォーラムで行われたソフトバンク新卒採用向けの説明会「孫正義LIVE2011」での孫正義社長の講演の要旨です。写真と本文は関係ありません。

(編集協力=大高志帆 撮影=小倉和徳)
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