防災無線が聞こえるように 自治体と連携協定も

笹サイレージの原料となる放置竹林の伐採を無償で引き受ける大和フロンティア。田中さんは、最初に担当した地域が印象的だったと話す。

「初めは『無償で伐採します』と言っても地主から警戒され、なかなか伐採させてもらえるところが見つかりませんでした。やっと知り合いの紹介で都城市の近くにある、えびの市の放置竹林を伐採しました。竹林の隣が公民館で、日当たりが悪くなっていたうえに、伸びた竹が電波を遮り、防災無線が聞こえなくなっていたのです。伐採後は『無線が聞こえるようになった』『日当たりもバッチリ』と感謝され、そこから口コミで伐採を頼まれるようになりました」

写真提供=大和フロンティア
初めて伐採を手がけた放置竹林。手前が公民館

一方で都城市には住民から、放置竹林に関するクレームの電話が年間40件ほど寄せられていた。そこで2020年に、都城市と大和フロンティアは放置竹林対策に関する包括連携協定を締結。市から紹介された放置竹林の伐採を引き受けることで原料の調達が安定したうえに、飼料や肥料の販売もスムーズに進み始めた。この活動は、放置竹林問題に悩む他の自治体からも注目され、視察や相談が絶えないという。

「都城市を皮切りに、これまで県内外の14の自治体と包括連携協定を締結しました。さらに都城市の他に、鹿児島県さつま町に第2工場(2022年)を、宮崎県新富町に第3工場(2023年)を立ち上げました。笹サイレージ事業の年商は、直近3年で約2.5倍に拡大しています」

写真提供=大和フロンティア
出荷を待つ笹サイレージ

放置竹林問題解決のポイントは

今でこそ笹サイレージ事業が軌道に乗った大和フロンティアも、2016年の発売から5年間は赤字続きだったという。

「苦しかったですね。いくら放置竹林問題の解決につながる優れた商品ができても、出口(販売先)がないと事業が成立しないことを、身をもって経験しましたが、あきらめずに続けてよかったです。また、今や社会課題となった放置竹林問題に対しては、産官学の連携が不可欠だと感じました」

今後も九州を基点に事業拡大を目指す大和フロンティア。地域の放置竹林問題解決のために蒔いた種から芽が出て、しっかりと根を張りつつある。

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