TikTokをフル活用、若者の熱烈な支持を集める
「無政府資本主義者」を自称するミレイ氏の勝利は、アルゼンチン政界に大きな衝撃を与えた。選挙前の世論調査ではわずかに有利とみられる程度だったが、BBCによると、決選投票で56%近い票を獲得。中道左派のライバル候補セルヒオ・マッサ氏に11ポイント以上の差をつけての大勝利を収めた。
勝利の決め手となったのは、主にTikTokを利用する若者からの支持だ。選挙運動中、財政削減の象徴としてチェーンソーを振り回し、自身の顔が描かれた巨大な100ドル札を掲げてドル化を訴えるなどのパフォーマンスをSNSで発信し、若年層の心を掴んだ。
AFP通信は、選挙運動の一環として、自作のスーパーヒーロー「キャプテン・アカンプ(無政府資本主義者)」の姿で民衆の興味を惹いたと報じている。黒のコスチュームに黄色のマント、三つ叉の槍を掲げるミレイ氏は、まるでマーベル映画の登場人物だ。
SNS戦略の責任者は22歳の大学生
ロイター通信は、ミレイ氏が率いるリバティ・アドヴァンス連合が、積極的なSNS戦略と人目を惹くおどけたパフォーマンスを展開したと報じる。ロイター通信は別の記事で、20代のインフルエンサーの緩やかなグループがソーシャルメディア戦略を立案し、票獲得に大きく貢献したと指摘する。
ミレイ氏のTikTokアカウント管理者は、22歳の大学生・イニャキ・グティエレス氏だ。ミレイ氏は彼を、デジタル戦略の責任者に起用。グティエレス氏は、英国の欧州連合離脱キャンペーンや、トランプ前米大統領、ボルソナロ前ブラジル大統領の選挙キャンペーンがSNSを通して成功を収めたことを挙げ、「ミレイ氏のキャンペーンではTikTok投稿に力を入れた」と話す。小規模キャンペーンにおいてもコストをかけず、多くの人にアプローチできる点を強調した。
クローン犬を溺愛する奇妙な理由
この奇妙な政治家の言動は、世界のメディアの注目の的になった。特に、物議を醸したのが、クローン犬との不可解な関係だ。2017年に死亡した愛犬・コナンのクローンを数匹作り、これら「4本足の子供たち」から政治戦略のアドバイスを受けているという。ニューヨーク・タイムズ紙は、アルゼンチンの報道各社がこうした情報を取り上げていると報じた。
実際のところ愛犬からアドバイスを受けているのかと尋ねられると、ミレイ氏は口を閉ざしたままだったという。スペイン字紙『エル・パイス』の取材でミレイ氏は、「家の中で何をするかは私の問題だ」と語り、明言を避けた。一方、勝利を収めた選挙戦の終幕イベントでは、愛犬が「世界最高の戦略家」だと口走っている。