経済学をツールとして使う心構え

「経済学をビジネスに活用しましょう」という話をあちこちでしていると、ときに、次のような2つの誤解をされることがあります。

誤解1 経済学を導入すると、目の前の課題がたちどころに解決する(魔法の杖的発想)
誤解2 経済学を導入すると、今までの仕事のやり方を一新しないといけない(革命的発想)

こうした誤解の背景には、おそらく、「ある大きなビジネス課題が持ち上がった経済学の○△という手法で検証してみる→課題を乗り越えビジネスが成功した!」というように、劇的なビフォア&アフターがあるようにイメージされているのではないかと思います。

ただ、ここで「誤解」とはっきり書いているとおり、「経済学は、どんな課題でも、たちどころに解決してしまう魔法の杖」ではありません。

また、「抜本的に変わるというよりも、今つまずいている課題を越えるちょっとした示唆につながる」ケースがほとんどです。たとえば、自社プロダクトの質や顧客満足度の向上や、顧客に対する施策づくり、さらには社内の業務効率化など。

イメージとしては、今あなたが行っているビジネスが軌道に乗って成長している。その成長のための改善策の随所に経済学のエッセンスがちりばめられている、織り交ぜられている、という感じです。

経済学者をビジネスパートナーと捉えよう

誤解2にあるように、「経済学者に言われたら、○○しないといけない」「○○しなければ、経済学を導入できない」ということもまた、大きな誤解です。ビジネスに経済学を活用するためには、経済学者を「大上段からビジネス施策を授ける先生」と捉えるのではなく、互いに尊重し合って「大小様々なビジネス課題にともに取り組む仲間」になる必要があるからです。

経済学を遠い存在として捉えていては、一向に経済学者サイドとビジネスサイドの距離は縮まらないでしょう。もちろん経済学者サイドのほうからの歩み寄りも必要ですが、ビジネスサイドの意識改革も欠かせません。

ここでいう意識改革とは、「自社を経済学的な目線から見つめると、ビジネス成長のチャンスが転がっているかも?」という発想を持つことです。

今はまだ、経済学にも経済学者にもなじみがなくても、「これから、どうやって利益を増やそうか?」と考えたときに、「経済学的考え方でビジネスを改革する」を選択肢の1つとして持つことが、重要な第一歩になるでしょう。