日本の生産現場は「警笛を吹く人」が少なくなっている

12月20日、ダイハツの品質不正問題の調査を担当した、第三者委員会は『調査報告書』を公表した。それによると、これまでに発覚したものに加え、新たに174件の不正行為が明らかになった。多くの品質不正には、現場を監督する係長級の役職が関与した。その結果、普通の従業員がやむにやまれぬ状況に追い込まれ、不正、不適切な行為が発生したと第三者委員会は指摘した。

不正行為が明るみに出たのは自動車業界にとどまらない。電機業界では、不適切会計処理問題をきっかけに東芝の業績が悪化した。最終的に東芝は自力での経営再建に行き詰まり、投資ファンドを軸とする国内企業連合に買収された。残念だが、わが国の企業は、そうした教訓を活かすことができなかった。

そこで共通するのは、実際の現場では、是々非々の考え方に基づいた行動を実践することが難しいことだ。わが国の企業は、常識と良識に基づき不正行為を指摘する人(警笛を吹く人、ホイッスル・ブローワー)が少なくなっているように見える。それが、「発覚しなければ続ける」という隠蔽いんぺい姿勢は強めたといえるかもしれない。

撮影=プレジデントオンライン編集部

品質試験はあまりにも形骸化していた

ダイハツの品質不正は、あらためて問題の深刻さを突つけたといえる。報告書の内容を見ると、不正は、本来では考えられないくらい多発し、しかも長く続いたとみられる。

その代表例に“エアバッグのタイマー着火”がある。本来、エアバッグの作動制御は電子制御装置が行う。しかし、ダイハツは、装置が開発されていない段階で衝突試験を実施した。現場の担当者は、それをクリアするためタイマーを使って試験を実施し、認証申請を行った。試験速度の改竄、タイヤ空気圧の虚偽記載、試験データの書き換えなども行った。

一連の品質不正の調査を進める中で、第三者委員会は3696人の役職員に対するアンケート調査を実施した。回答者は、問題が発生した原因を何と考えるか、15の選択肢から選んだ(複数の選択可)。回答の回収率は98.54%だった。かなり広範囲の調査を行い、その結果を公表した。