EVシフトの中、日本車の信頼低下につながる恐れ
ダイハツの品質不正問題は、わが国自動車産業全体の信用力低下につながる恐れがある。世界の自動車業界では、中国のBYDや米国のテスラによるEV生産能力の強化などで、世界的なEVシフトが鮮明だ。
アジアのデトロイトと呼ばれたタイなど、これまでわが国の自動車メーカーが高シェアを獲得した市場でも、中国EVメーカーの進出は目覚ましい。現地の政府も、EV普及策を経済成長の起爆剤にしようとし始めた。
そのタイミングで、ダイハツでは過去30年以上にわたる品質不正が明らかになった。ホンダではデンソー製ポンプの不具合が表面化した。他の自動車メーカーでも燃費データなどに関する不適切な事案が相次いだ。
EVシフトの遅れが鮮明な中で、わが国自動車メーカーの一連の問題は日本製の自動車の信頼感低下につながる恐れがある。国内でも、相次ぐデータの書き換えなどを懸念する消費者が増加するだろう。
この問題は他の産業にとっても他人事ではない
エンジンを中心に、3~5万点もの部品を搭載する自動車産業の裾野は広い。負の影響は完成車メーカーにとどまらない。ダイハツなどの生産・出荷の再開に時間がかかれば、下請け、孫請けなど完成車メーカーの取引先企業の収益は減少する。展開次第では、資金繰りに支障が生じる恐れもある。
それは、わが国経済に負の影響を与える。1990年の年初にバブルが崩壊して以降、わが国の経済は、自動車産業を支えに持ち直した。今回の品質不正をきっかけに、日本車を敬遠する消費者心理が高まれば、自動車産業に頼った経済運営は難しくなるはずだ。問題の波紋を抑えるためにも、関係各企業は迅速に問題を対峙し、消費者をはじめ利害関係者の不安を解消する努力をすべきだ。
自動車産業界での不正問題は、他の産業にとっても決して“他人事”ではない。企業は社会の公器として、持続的に、無理なく付加価値を生み出すことが求められる。それに反する行為は許されない。不正を排除する価値観が自社の組織に醸成されているか、企業はこれまでの経営の在り方を見直すべき時にきている。