「寄付講座問題」は「報道で知った」と答弁

続けて元島田市長の桜井勝郎県議(無所属)から厳しい追及があったのは、2021年10月、県リニア専門部会の森下部会長がJR東海に総額約1億円もの資金提供を求めた「寄付講座」提案問題だった。

森下部会長の提案書では、「掘削によるトンネル湧水量を可能な限り低減させる方法を研究する。また、トンネル湧水により生じる生態系への影響を低減させる」など、まさに現在、JR東海の調査資料を基に、県専門部会で議論しているテーマが並んでいるだけで、大学で研究する新しいものは何も含まれていなかった。

桜井県議は、リニア工事をやらせないように遅らせようとする森下部会長のネガティブな会議運営を批判した上で、「トンネル工事を早期に着手したい弱みにつけ込み、JR東海から多額のカネを出させ、自らが主任教授となって報酬をせしめる裏取引を持ち掛けた」と厳しく追及した。

その上で、「川勝知事の関与の有無」についてただした。

川勝知事は「新聞報道で初めて知った」と逃げたが、桜井県議は「国の有識者会議の座長に対して、知事は『御用学者』などと叱責したにもかかわらず、森下部会長に対して不問にして放っておくのはいかがなものか」と川勝知事の政治姿勢を問題にした。

自分の味方である県専門部会の「御用学者」は放置

森下部会長は、寄付講座の費用を年3048万円、3年間で総額9144万円と基本構成で試算したとしている。

基本構成には、基本料金、教職員人件費、講座研究費の項目を並べている。

JR東海の調査資料に基づいて研究するのだから、どう考えても、費用が掛かるのは主任教授となる森下部会長らの報酬等である。

寄付講座で森下部会長の報酬に見合う主任教授の仕事とはいったい何なのか?

リニア担当部長は「森下部会長に確認したところ、寄付講座の設置について私案を説明しただけである。また、提案が実現しなかったことは、その後の部会運営や発言に何ら影響しないとの認識であるとうかがった」と、専門部会の運営があたかも公明正大だったかのような言い訳をした。

と言うのも、専門部会後の囲み取材で、森下部会長のJR東海を威圧するような発言等について記者たちから厳しい意見が続き、あまりにも恣意的な会議運営が問題になったからだ。

「私案を説明しただけ」ならば、ちゃんと多額の費用についてわかりやすく説明すべきであり、寄付講座の主任教授の仕事とは何なのかを明確にしたほうがいい。