リニア妨害を続ける静岡県の川勝知事が、東京-山梨間の「部分開業」を再び持ち出した。ジャーナリストの小林一哉さんは「部分開業論はリニア問題の解決策にはならない。川勝知事は思い付きで物事を喋っている」という――。

あっさりと閉会した12月の静岡県議会

静岡県議会12月定例会は、川勝平太知事の「不適切発言」をごまかす不可解な謝罪に始まり、県リニア専門部会長がJR東海に多額資金を要求した「寄付講座」問題、川勝知事の「リニア問題の解決策は部分開業」発言もあって、知事追及の火の手はさまざまに上がった。

筆者撮影
11月28日の会見で「田代ダム案を専門部会に戻す」と発言した川勝知事

ところが、県議会最終日の21日、自民党県議団はあっさりと閉会を決めて、「川勝劇場」の幕を引いてしまった。

6月県議会は最終日に政局となり、深夜になって知事不信任決議案を提出、翌日未明に1票差で否決される事態にまで発展した。

9月県議会も最終日に「不適切発言」が発覚して大もめとなり、結局12月県議会に先送りした。

となれば、「不適切発言」問題を受けた12月県議会は、政局がらみの何らかの騒ぎが起きるはずであり、21日の最終日に大きな山場が来ると見られていた。

自民の「裏金疑惑」が県議会に与えた影響

今回の「川勝劇場」の幕引きの最大の理由は、国政での安倍派、二階派の政治資金パーティー問題で、東京地検特捜部が19日、前代未聞の派閥事務所への強制捜査を行ったからである。

東京地検特捜部は強制捜査で議員逮捕の準備を進め、年内には大物議員の逮捕まで視野に入れ、組織ぐるみの犯罪に広がる可能性が高いとされる。

となれば、自民党県議たちもそれぞれの地元に戻り、支援者らへの説明を含めて、自民党存立の危機とも言える最悪の状況に備えることを優先したのだろう。

自民党の裏金疑惑が川勝知事には幸いした結果となった。

裏を返せば、川勝知事は県議会の厳しい追及をまんまと乗り越えたと見るほうが正しいのかもしれない。

ただ12月県議会で明らかになった県リニア地質構造・水資源専門部会の森下祐一・部会長(静岡大学客員教授)によるJR東海への「寄付講座」提案は、一歩間違えば裏金問題に通じるおカネの‟不祥事‟だけに、今後の川勝知事への攻撃材料になる可能性を含んでいる。