「解決」のはずの田代ダム案も実際は課題だらけ

今回の田代ダム案について、利水者から書面による了解が出そろったところで、川勝知事は森下部会長の意見を尊重するとして、再び専門部会に戻すことを宣言した。

森下部会長は11月20日、田代ダム案の実施について、5項目の協議事項が必要との意見書を提出、今後も専門部会で対話することを要請している。

それを受けて、川勝知事は「トンネル湧水による水質、水温や生態系への影響という懸念は残されたままである。県としては、大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全の両立を図るため、引き続き、JR東海との対話を進めていく」とのコメントを発表した。

つまり、「実現性を技術面から確認するために、引き続き県専門部会でJR東海との対話を進めていく」と川勝知事は主張しているのだ。

それにもかかわらず、JR東海は12月21日、田代ダム案の実施に当たって、東京電力リニューアルパワーと合意に至ったと発表した。

まるで田代ダム案の実施に何ら問題がなくなったようにさえ見える。

静岡市、筆者撮影
取水抑制が行われる東電RPの田代ダム

とにかく早く、県地質構造・水資源専門部会を開催して、両者の主張に齟齬がないことをはっきりとさせるべきである。

JR東海は県専門部会の開催を強く求めるべき

ところが、専門部会は8月3日に開催して以来、約5カ月間も開かれていない。

このままでは、何が何だか大井川流域の人たちには理解できないだろう。

専門部会を開いた後、流域市町、利水団体、県の加入する大井川利水関係協議会をきちんと開催して、あらゆる疑問を解消すべきである。

静岡県庁、筆者撮影
8月3日の県地質構造・水資源専門部会

今回の「寄付講座」問題が発覚して以来、森下部会長は専門部会の開催から逃げているとしか思えない。このままでは半年以上、専門部会が開かれない恐れさえある。

JR東海は、県専門部会の開催を県に強く求めていくしかない。

また森下部会長は公の場で「寄付講座」提案についてひと言も口にしていない。県専門部会後の囲み取材で、本人から直接、説明してもらいたい。