言い方ひとつで大きく変わる

2つほど、ダメな例と好ましい言い換えを挙げてみましょう。

×英語の勉強をしないか?
○将来、外国の人と喋れるようになったらプラスだと思わないか?
×プレゼン大会に出てみないか?
○プレゼンスキルを磨いて、将来、人に対して自分のやりたいことを話せる人にならないか?

言い方の問題ですが、このように相手の「成長欲求」に響くような言葉選びをすることで、相手のモチベーションを上げることができます。人は、自分が「成長したい」と思えば、行動に移せるのです。それをアシストするのがコーチングです。

そして成長のために必要なのは、「自分の現在地の理解」でもあります。自分が今、どれくらいのスキルがあって、目標を達成するためには将来的にどうならなければならないのかという「差分の理解」が重要です。

第3章では、より具体的に相手に「成長差分の理解」をしてもらう方法をお伝えします。

スパルタ教育が有効な場合

そして、最後の質問は、「何をしてほしいか?」です。

この質問の意図について説明する前に、少しだけ脱線させてください。

みなさんは、スパルタ教育ってどう思いますか?

人から厳しく指導されて、ガンガンに詰め込まれる指導で、現在では否定されている部分が大きいと思います。みなさんも「スパルタ教育はダメだ」というイメージがあるのではないかと想像しますし、「教えない」スタンスを標榜している本書は、スパルタ教育と真逆だと思われているに違いありません。

ですが、私は「スパルタ教育はダメだ」とは思っていません。一定の効果があるタイミングがあると考えています。それは、「相手がスパルタ教育を望んでいるとき」です。

「自分は厳しく指導された方が伸びると思います。ですから厳しくしてください!」と相手が言っているとき、スパルタ教育はとても効果がある手法だと言えます。先ほどから何度も、「相手に選択してもらうことが重要だ」と言っていますね。

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厳しい指導がいいのか、優しい指導がいいのか、相手が望んでいるかどうかが最重要なのです。相手の選択を重んじることは、必ずしも相手に優しくすることとイコールではないのです。