成績評価にクレームをつけてくる生徒も
それでも「お願い文」は決して気持ちのいいものではない。
そんな文章を書き連ねる時間があるのなら、なぜ答案を書かないのか、それ以前になぜテスト勉強という準備を怠ったのか、という根本的な疑問が湧いてくる。私は「お願い文」は無視して、厳正冷徹に点数をつける。さらにできるだけ答案を返却し、場合によってはなぜその点数になったのかを説明し、学生に納得してもらう。
ある穴埋め式のテストにおいて、そのほとんどが空欄で100点満点中18点を叩き出した学生がいた。単位を落とした彼はのちに書面で正式な異議申し立てをしてきた。
うーん。ところどころに論理矛盾があるなあ。このように、KG大では、自分の成績について見直しのクレーム(*2)を文書で申し出ることができる。
(*2)見直しのクレーム 受講生にとっても「F(不可)」をくらうのは死活問題なので、私は何度も答案を見直し、受講生から抗議を受けたとしても「最高裁まで争っても勝てる」自信を持ってFをつけている。少々の異議申し立てには動じないのである。
生徒の母親が突然現れて…
担当教員はそれに対して文書で答えなければならない。私は彼への回答書をしたためた。
彼からの再度の異議申し立てはなかった。
教室での授業が終わり、研究室に戻ろうとしたところ、中年の女性に呼び止められた。「多井先生でいらっしゃいますね?」50代だろうか、細身で品のよさそうなブラウスを着た女性だった。「緑川の母でございます」緑川君は私が担当する講義科目を受講する学生だ。そのことはすぐにわかったが、そのお母さんがいったいなんだろうか。