「運送業者様へ」箱に書かれたメッセージに違和感を覚える

なかでも筆者が最近「やりすぎ」だと感じるのが、段ボール箱にあるこんな文言だ。

「運送業者様へ いつも丁寧な配達ありがとうございます。お客様が心待ちにしている商品です。取り扱いに十分注意してください。」

読者提供
「運送業者様へ」と書かれた段ボール箱。配慮のあるメッセージに見えるが、それは違う。そんなことを言われなくても、トラックドライバーは丁寧に運んでいる。

一見すると、トラックドライバーへの配慮があるメッセージに見えるが、筆者はこのひと言に、底はかとない違和感と言い知れぬ“圧”を毎度覚える。

この言葉は、送り主が宅配ドライバーを利用し、送り先の消費者に対して「我々は配送業者にもお客さまにもこのくらい配慮できる企業」と、暗にアピールしているように見えるのだ。

というのも普通のドライバーは、そんなことを書かれなくても荷物をできる限り丁寧に運んでいる。なによりも隣に「ケアマーク」(「割れ物注意」などのマーク)が掲げられているではないか。

ケアマークの横に、さらに「丁寧に運んでください」と文字化することには、やはり「別の狙い」を感じずにはいられないのだ。

日本の物流の現場は、こうして「顧客至上主義」を押し付けられているのである。

長時間労働是正の前にやることがある

いま世間では「物流の2024年問題」が騒がれている。

橋本愛喜『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

これはトラックドライバーの「長時間労働の是正」により、人手が不足し、荷物が運べなくなるという問題だ。発端は「ドライバーの働き方改革」であったにもかかわらず、国も世間も「荷物」のことは心配しても、ドライバーのことは心配しない現状に、やるせない気持ちを抱いている。

今回の「段ボール箱問題」をみても、こんな深刻な理不尽を放っておいて、「長時間労働の是正」ばかりに目を向けるこの国は、本当におかしい。働く時間さえ短くすれば、ドライバーの労働環境がよくなると思ったら大間違いなのだ。

最後にもう一度問いたい。

もし注文した荷物の「段ボール箱」に少しでもキズが付いていたら、あなたはクレームを入れるだろうか。

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