コミュニケーションにおける「3つの障害」

人に何かをわかってもらうためにコミュニケーションをとるのは、毎日の生活や社会活動の基本だ。振り返ってみると、人は1日中、誰かに何かをわかってもらおうとしている。

・通勤時、狭いところを通りたいとき
・会社で、部下に報告書をあげるように依頼するとき
・営業で、お客さんに自社の製品のよさを売り込むとき
・会社を出て、家族に帰宅の時間を知らせるとき
・家に帰って、子どもに「勉強したほうがいい」と伝えるとき

しかし、誰かに、何かを伝えるのはほんとうに大変だ。

ちょっとしたことなら、言えばすぐに相手もわかってくれるが、うまくいかないときも多い。相手に依頼をするとき、あるいはこちらの気持ちを伝えるとき、正確に相手に伝わらず、「なんで言ってもわかってもらえないのか」とため息をもらす人も多いだろう。ではなぜ、言ってもわかってもらえないのか? これは多くの場合は言葉の不自由さに起因する。

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伝えたいことに対して、適切な言葉を選択することが難しいため、コミュニケーション障害が発生するのだ。コミュニケーション障害は、大別すると3つある。

(1)言っていることの意味がわからない
(2)言っていることを誤解する
(3)言っていることはわかるが、理解したくない。やりたくない

わざわざ分かりにくい言葉を使う必要はない

コミュニケーション障害(1)
言っていることの意味がわからない

たとえば、「アンケート結果を『しゅうれん』させます」と書いても、ほとんどの人はこれを理解しないだろう。ちなみに、「しゅうれん」は「収斂」と書き、「まとめる」意味だ。言葉は相手の語彙ごいのなかから選択せねばならず、相手の頭のなかにある語彙にない言葉を使うときは、その言葉を調べるように、とくに注意を向けさせる工夫が必要である。だが、これだけであれば、わかりやすい言葉を注意深く使えば、解決はできる。

ほんとうに問題なのは、言葉の意味がわからないことではなく、「その言葉が示すことを経験したことがない」というときだ。具体的に言えば、「頑張ったら報われる」という言葉は、頑張ったことのない人、報われたことのない人には理解されない。

「オレの言う通りやればうまくいく」という言葉も一緒である。「オレの言うことをやったことのない人、うまくいったことのない人」にそれは理解されない。したがって、言葉の意味をわかってもらおうとしたら、その人の経験にある出来事、言葉を使わなければ正確には理解されない。