東大生に選ばれるコンサル業界の光と影
日本のコンサルティング業界は、2018年に1兆円を突破して以降、右肩上がりを続けています(コダワリ・ビジネス・コンサルティング発表)。東大生の就職先としても、アクセンチュアやデロイト トーマツコンサルティング、マッキンゼー・アンド・カンパニーといった大手の外資系コンサルが人気を集めています。
しかし、2023年には経営コンサルの倒産件数が過去最多となるなど、不安定な側面もあるようです。企業の明暗を分けるのは一体何なのかを考えるために好例なのが、かつて大学生の就職人気ランキング上位に入っていながら2011年に経営破綻した採用コンサルティングのベンチャー企業・ワイキューブです。
経営の世界で良く言われるように、「成功はアート、失敗はサイエンス」です。要するに、成功に再現性はありませんが、失敗には再現性があります。よって、失敗要因を失敗事例から学んでおくことで、私たちは企業の倒産を回避することができます。
本稿では、同社が華々しい成長を経て転落する軌跡を追いながら、「消える企業」の特徴について見ていきましょう。
倒産した理由はリーマンショックなのか?
ワイキューブは1990年、安田佳生氏によって設立されました。安田氏は『採用の超プロが教える』や『千円札は拾うな。』といったベストセラー書籍を著し、高い知名度を誇っていました。採用支援を得意としていたワイキューブは、業界で次第に地位を確立し、企業の採用活動におけるパートナーとして信頼を築いていきました。
独自のワインセラーやバーを備えたモダンなオフィス空間が話題になり、メディアでも注目されるようになり、「就職したい企業」の上位にランクイン。人材コンサルティング市場において急速な成長を遂げ、2007年5月期には売上高約40億円を超えるまでに成長します。
しかし、2008年に発生したリーマンショックにより、ワイキューブの主要な顧客層である中小企業が採用活動を縮小あるいは停止するケースが増加。2007年に46億円を超えていた売上は、2010年には約14億にまで落ち込み、リストラによる経営改善策を講じても業績の回復が見込めず、2010年3月30日に東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請、事実上倒産しました。