「ヘアアイロンによる火傷は日常茶飯事」?

報告書の内容を見ると、違和感を拭えない点があります。報告書2ページの8行目「ヘアアイロンで火傷をすることは劇団内では日常的にあることであり、記録は残していないとのことであった」と記載しています。

故人の額には小指の先ほどの傷が残り、写真でも確認できるヘアアイロンによる火傷がありました。宝塚歌劇団では、こうした火傷が年にどれほど発生しているのか、何人がそのような火傷を負っているのか、歌劇団側に発表してほしい。ヘアアイロンを自分で利用して火傷をしたのか、他人によって火傷したのかの分析も知りたいものです。

写真=iStock.com/RichLegg
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歌劇団の診療所では、火傷は日常茶飯事なので記録を取っていないそうですが、歌劇団の幹部、現場責任者、劇団員は「ヒヤリ・ハット」というビジネス界で使われている用語をご存じないのでしょうか。

重大な災害・事故を防ぐ努力をしていたのか

以前、企業やビジネス界を頻繁に取材していましたので、労働現場や職場での事故があると、原因の究明、ミスが起きないよう、どのような対策をしたか、ヒアリングしてきました。

ヒヤリ・ハットとは、重大な災害や事故には至らないものの、「ヒヤリとしたり、ハッとしたりするもの」を指し、ヒヤリ・ハットが起きないようにカイゼン(改善)して、重大な災害・事故を招かないようにする手法のこと。労働災害での経験則で、「ハインリッヒの法則」とも呼ばれています。

1件の大きな事故や災害の背後には、29件の軽微な事故や災害があり、さらに300件のヒヤリ・ハットがあると言われています。日常的に火傷が起きるのなら、宝塚歌劇団はヒヤリ・ハットの手法で、問題のカイゼンに取り組んだほうがいいと思います。

大きなお世話かもしれませんが、一言申し上げたい。歌劇団の診療所で受診する女優や劇団員は国民健康保険、あるいは健康保険組合などの保険を使っていると思いますが、医療費抑制に全く貢献していないことになります。もし、額の火傷が日常的に起こっているなら、宝塚歌劇団側は管理責任を免れません。