何時間も叱責され、泣きながら謝り続けた

宝塚歌劇団の劇団員のAさん(享年25)が9月末に急死した問題で、遺族が12月7日、代理人弁護士を通じて「遺族の訴え」を公開しました。全文は次の通りです。

娘と会えなくなってから、2カ月が経ちました。

今でも娘からのラインを、電話を、そして帰ってくる足音を待ち続けています。その間に、さまざまな事がありましたが、劇団がパワハラを一向に認めない姿勢に憤りを感じています。

劇団が調査依頼した弁護士による調査報告書の内容は到底納得出来ません。宙組の生徒さんが勇気を出して証言してくださった事、私たち家族が訴えた事が全く反映しておらず、パワハラを行った上級生を擁護する歪曲された内容になっています。

しかしながら、調査報告書が認定している事実だけでも、当該上級生の言動がパワハラにあたります。

何日も、何時間も、感情に任せて叱責され、「すみませんでした」と言うことしか許されず、泣きながら謝り続けている娘の姿を想像すると、憤懣やる方ない思いです。

娘は、もう何を言う事も出来ません。それを良いことに、自分たちの都合の良いように真実をすり替え、娘の尊厳をこれ以上傷つけるのはやめてください。

私たち家族は、劇団と、パワハラを行った上級生が真実を認め、謝罪する事を求めます。

宝塚大劇場
写真=iStock.com/winhorse
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「女の軍隊」ならではの問題

遺族側はAさんの死亡原因について、「過重労働」と「上級生からのいじめ、パワハラ」があったと主張しています。12月7日に会見を開いた代理人の川人博弁護士は「ヘアアイロンで火傷を負ったこと」「下級生の失敗はすべてあんたのせいやと叱責を受けたこと」など、3つの時期に分けて、15のパワハラ行為があったことを指摘しました。

一方、いじめ、パワハラについて否定している歌劇団は、11月14日に公表した調査報告書を金科玉条のようにして、弁明を続けています。この報告書が十分な調査を尽くしたものと言えないことは前回の記事で指摘した通りです。

その報告書でさえ、上級生が、周囲の劇団員にも聞こえるほど叱責したことを認定しています。「いじめやハラスメントは確認できなかった」という歌劇団の主張は苦しいように思います。

宝塚音楽学校をめぐっては15年前、集団でいじめられた上、退学処分にした音楽学校に対し、退学撤回を求める「タカラヅカいじめ裁判」が話題になりました。なぜこうした問題が起きてしまうのでしょうか。そこには「女の軍隊」とも言える宝塚歌劇団特有の問題があると考えられます。