「清く正しく美しく」がモットーの「女の軍隊」
上級生に絶対服従で、言葉の暴力を受けても聞いているだけ。自分の意見を伝えることもできず、難癖を付けられて連帯責任を取らされてしまう。宝塚音楽学校で上下関係やしつけを2年間、みっちり教え込まれて、その卒業生だけが宝塚歌劇団に進みます。
上下関係は維持されたままで、異なる価値観が入り込む余地はありません。入団後も劇団員は生徒と呼ばれ、タカラジェンヌ(劇団員)自身が「女の軍隊」と語るように権力構造、序列が明確で、常識外れ、不合理なことが蔓延る閉鎖社会が形成されてきました。
宝塚音楽学校の校訓であり、宝塚歌劇団のモットーである「清く正しく美しく」を求められ、それに反することは「隠さないといけない」。肉親にも不祥事を漏らさないよう箝口令が敷かれ、「外部漏らし」が起きると、徹底的に犯人捜しをしてきました。
先輩が「カラスは白」と言えば、白と思わざるを得ないほど、理不尽な論理がまかり通り、外部と遮断された密室、「乙女の園」で飼い馴らされ、不都合なこと、悪事を隠蔽してきました。「タカラヅカいじめ裁判」でも、裁判所の判断を無視し、結局、生徒を学校に復帰させないまま、うやむやにしました。
体面を繕い、人に話せない秘密を共有することで、「女の軍隊」の絆はより強固なものになっていきます。
労働組合がなくなり、業務委託契約に
宝塚歌劇団では、戦後、労働組合が結成され、「宝塚の至宝」と呼ばれた天津乙女や、人気男役スターとして一世を風靡した春日野八千代が組合の副委員長を務めてきました。しかし、1977年に劇団員と業務委託契約を結ぶことになり、労働組合を解散してしまいました。
阪急電鉄にとって、宝塚歌劇団とプロ野球チームの阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)は赤字を垂れ流す「お荷物」でしたが、1974年の『ベルサイユのばら』の空前の大ヒットで、劇場を新設するなど、公演機会を増やして増収を図ろうと目論んでいた時期でした。
劇団員個人との対等の契約(個人事業主としてのタレント契約)にしたほうが経営の自由度は高まり、労働組合を潰したほうが経営側のメリットは大きいと考えたのでしょう。
当初、入団後7年目の劇団員から業務委託契約にしていましたが、2007年からは6年目からに変更。業務委託契約と言っても形だけの関係であり、宝塚歌劇団以外の仕事はできず、1年ごとの出演契約です。
稽古や雑用など時間の拘束も長く、ギャラ(出演料)の交渉を、劇団員が代理人を立てて丁々発止で決めているのかも疑問です。「生徒」と呼んでいる相手と、まっとうな交渉をしているとは思えません。