宝塚歌劇団はいじめ・パワハラを全面否定
今年9月30日、宝塚歌劇団の宙組所属の劇団員(25歳、以下、故人と表記)が自宅マンションから飛び降りる“事件”が発生し、自死と見られています。11月14日に宝塚歌劇団が行った記者会見を見ましたが、亡くなった方への哀悼の気持ちが感じられず、事務的で、冷たい印象を持ちました。
死亡原因をいじめやパワーハラスメントだと考えている遺族側の主張を、宝塚歌劇団は全面否定しています。睡眠時間を削ってまで、公演や稽古、準備をしていた労働時間については、時間の差がありますが、過労死を招くような過酷な環境であったことは認めました。
劇団員の死に関して、歌劇団は法律事務所(大江橋法律事務所)に依頼し、9人の弁護士が調査やヒアリングをして調査報告書が作成しました。報告書の概要版が公開されています。
14日の会見は、報告書に基づいて歌劇団が“事件”の概要を説明するために開かれたものでした。会見冒頭、亡くなった劇団員への哀悼の言葉もなく、遺族に対するお悔みや謝罪もなく、いきなり報告書の説明から始まりました。最初に違和感を覚えたのはこのときでした。
最初から「調査の限界」を認めた報告書
ただ、この報告書は、第三者委員会のような公平性、独立性が担保されている委員会が作成したものではありません。9人の弁護士で「宝塚歌劇団 調査チーム」を発足させましたが、4人の名前は記されていません。
大江橋法律事務所に所属している石原真弓弁護士が、阪急阪神百貨店の親会社「エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング」の社外取締役で監査等委員を務めており、縁もゆかりもない法律事務所に依頼したものではありませんでした。H2Oの大株主には、阪神電気鉄道とともに、宝塚歌劇団をはじめ阪急阪神グループの持株会社である阪急阪神ホールディングスが名を連ねています。
報告書には次のような但し書きがあります。本件調査の前提を「劇団が保有していない情報・資料等の収集には限界がある」としており、劇団側が資料を出さなかった場合やヒアリングする劇団員やスタッフの協力が得られなかった場合は、事実の解明は難しいようです。
「新たな証拠資料等によっては、事実を訂正する可能性がある」という一文も入っていて、調査報告書には限界があるように思われます。しかし、宝塚歌劇団や阪急阪神HDは、調査報告書を錦の御旗にしており、報告書を楯に開き直るのはおかしいのでは。そんな違和感があります。