重要となるのは「若者の自己開示」をいかに促すか

以上をふまえ、育て方改革5つのポイントを挙げる。

1 企業がもたらす機会だけでは育てきれないため、若者の自主性が尊重および要請される

企業だけで育てる内製化した人材育成は限界を迎える。「企業が若者を育てる」から「若者が企業を活かして育つ」へ主語が転換することになる。

つまり、会社以外の経験も会社の経験も両方とも大事な機会として、若者が自身で組み合わせて育っていく観点である。この点で重要となるのは、若者の自己開示をいかに促すかである。

職場側としては外の経験について開示を受けなければ、効果的な支援や外部経験を活かしたアサインメントが不可能だからだ。そのためには「開示するのが義務」と強制するのではなく、開示した者が得をするインセンティブ構造をつくらなければならないまた、若者が企業を使って育つことになるから、育て方改革ではなく「育“ち”方改革」と言ったほうが正しいかもしれない。

企業が育てるのではなく、若者が育つことを企業がいかに支援するかを考える「育ち方改革」の性質が含まれることにも注意したい。

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若手育成を支援するマネジャーも支援する

2 上司やマネジャーだけに若者育成の責任を押し付けない

上司やマネジャーが「自分が育てられたやり方で育てる」ことができない以上、若者育成の難易度は跳ね上がったと言える。育成を上司やマネジャー、OJTトレーナーなどだけに任せず、社内横断的な視点や外部のキャリアコンサルタントの意見も取り入れた仕組みに変革する必要がある。

さらには、職場の外で育てる仕組みを導入すべきだろう。副業・兼業といった「会社の外」だけでなく、勉強会や若手コミュニティといった「会社の中だが職場の外」といった空間も活用できる。

さらに重要なのは、育成に前例が通用しづらくなり難易度が上がったことで上司、マネジャーといった直接育成を担う者の負担が増したことだ。日本企業では管理職もプレイング・マネジャーがほとんどであり(部長級で9割以上という調査もある)、働き方改革以降の職場で最も忙しいのが現場のマネジャーであるという声もある。

日本経済新聞は総務省の労働力調査を分析した結果として、労働時間が若手ほど減少しており、働き方改革の効果に年代差が生じていることを指摘している。

「支援者支援」という政策用語があるが、若者育成についても、現場で直接育成・支援を担務するマネジャーだけに任せきりにせず、彼ら彼女らをいかに支えるか、組織の課題となっていくだろう。