女性活躍推進法以降、女性管理職は「ちょっとだけ」増えた

まず、女性管理職割合は増えたのかという疑問から検証していきましょう。

図表1は厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を用いて、民間企業における女性管理職割合を見ています。女性活躍推進法は2016年の施行当初、301人以上の企業を対象としていたため、ここでは企業規模で女性管理職割合を分けてみました。なお、データの都合上、就業者が500人より多いか、少ないかで分類しています。

図表=筆者作成

この図から、女性活躍推進法の適用対象となっている企業で女性管理職割合が緩やかに増加したことがわかります。500人以上の企業では、女性管理職割合が2015年で7.5%だったのですが、2019年には9.2%へと微増しました。増加幅は1.8%です。これに対して、女性活躍推進法の適用対象外の企業の多い500人未満の企業では女性管理職はほぼ変化していませんでした。

この結果から、女性活躍推進法によって「ちょっとだけ」女性管理職割合が増えたと言えるでしょう。

女性管理職の増加は大企業で

図表1から、女性活躍推進法の適用対象企業で女性管理職割合がやや増えたと言えそうですが、適用対象企業の中には従業員が1000人以上を超える大企業もあれば、中規模の企業も混じっています。これらの企業で法への対応が異なっていてもおかしくありません。特に、大企業は社会の目もあるため、比較的真剣に女性管理職問題に取り組んだ可能性があります。

そこで、図表2では500人以上の企業を500~999人と1000人以上に分けてみました。これを見ると、女性活躍推進法の施行以降に女性管理職割合が増えたのは、1000人以上の大企業だとわかります。

図表=筆者作成

1000人以上の企業では、女性管理職割合が2015年で7.1%だったのですが、2019年には9.2%になり、この間に2.1%の増加となっていました。これに対して、500~999人の企業では、この間わずか0.3%しか女性管理職割合が増えていませんでした。

これらの結果から、女性活躍推進法によって女性管理職割合が増えたのは大企業のみであり、他はほぼ影響がなかったといえるでしょう。