マナーアレルギーが巷に蔓延

このように、近年のSNS上での炎上事件は、なぜそのような型を行うのかという理由を明確に説明できないマナー講師と、メディアや企業からの要請などが複雑にからんでいます。

西出ひろ子『突然「失礼クリエイター」と呼ばれて』(きなこ出版)

それらの課題や矛盾を生んでいるそもそもの原因は何かといえば、マナー教育や研修から、「心」や「本質」を伝える部分が失われているからです。マナー講師に仕事を依頼する企業やメディアの担当者は、型ばかりを問題にして、マナーの根本であるその本質、なぜそうするのかというその根拠と理由、そして相手を慮る心の部分を理解できないままでいる。その結果、マナー講師には型だけを教えてもらえばいい、という風潮ができ上がってしまったのではないでしょうか。

こうした状況のなかで、マナー講師を養成する各企業、団体や組織も、マニュアル的な型だけを受講者に教えて講師として認定し、企業に派遣するという悪循環ができ上がってしまっています。

メディアはメディアで、奇抜さの観点からおもしろいマナーを伝えたり、人目を引くマナー講師を見つけては露出させたりという方法で、視聴率やページビュー(PV)を稼ごうとします。

今、一般の人たちの間にマナーアレルギーが起きているのは、これらがすべてではありませんが、こうした事情が影響していることは少なからずあると思います。

単に型を覚えるだけなら簡単です。だれでも講師になれます。けれども、歪みが出てきているわけです。

若者の間で「マナー」は忌み言葉に

SNSでマナー講師に批判が集中し、今や「マナー」という言葉そのものが、若い人たちの間では忌み言葉になってしまいました。『うっせぇわ』(歌Ado/作詞・作曲syudou)というヒット曲には、マナーを批判する歌詞が並び、それを支持する人数に圧倒されます。このようなマナーアレルギーを引き起こしているのも、マナーの本質である心の部分が失われてしまった結果だと私は思っています。

一方で、前述の通り、そもそもマナーがこれだけ批判の対象になるのは、それだけ日本人がマナーに高い関心を寄せている証拠とも言えます。若い世代の多くは、正しいマナーを知って、それをしっかり実践したいと思っているに違いありません。現に今年の新入社員研修でお目にかかった皆さんは、全員素直で、マナーを吸収しようと一所懸命でした。ところがマナー講師によって言うことがバラバラだったり、聞いたこともないようなことをマナーとして押しつけてくるマナー講師が続々と出てきたり……。居丈高な言動のマナー講師に不信感や違和感を覚える気持ちもわかります。そしていよいよ、マナー講師は“排除したい存在”になってしまったのではないでしょうか……。

マナーは本来、皆さんがイメージしているような、堅苦しくて、緊張を誘うようなものではありません。マナーとは人と人との関係を平和なものにするために存在しています。寛容で温かいものがマナー。人生をより豊かでハッピーにしてくれるのが本来のマナーなのです。

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