※本稿は、成嶋祐介『GAFAも学ぶ! 最先端のテック企業はいま何をしているのか』(東洋経済新報社)の一部を再編集・加筆したものです。
「フードデリバリー大国」の中国で、市場をほぼ独占
中国の街中では、黒地に黄色のロゴのデリバリーバッグを背負った自転車やバイクをよく見かけます。一見、「ウーバーイーツ」のようにも見えますが、これは中国最大手のフードデリバリーサービス「メイトゥアン(美団)」の配達員です。
CNNIC(中国インターネット情報センター)の報道によると、中国国内におけるフードデリバリーの利用者は約4億7000万人(2021年6月末時点)と、全人口の実に3分の1にあたります。長引くコロナ禍と中国当局による「ゼロコロナ政策」の影響もあって、この数年で中国国内のフードデリバリー市場は大きく成長しています。そのような「フードデリバリー大国」の中国で、市場をほぼ独占しているのがこのメイトゥアンです。
メイトゥアンは、市場の67.3%と圧倒的なシェアを誇っています。もともと「グルーポン」のようなオンライン共同購入型クーポンを販売していたメイトゥアンと、「食べログ」のような口コミ型のグルメサイトを運営していた「大衆点評」が、2015年に合併して誕生しました。
ウーラマから遅れてフードデリバリー事業に参入したメイトゥアンは、信頼性の高い口コミが集まるグルメサイトと、短時間で配送するフードデリバリーの相乗効果によって、総合グルメプラットフォームとしての地位を確立。ウーラマを大きく引き離しました。
テンセント、アリババに次ぐ「メイトゥアン」
近年では、「食の総合プラットフォーム」からホテル検索・予約サイト、自転車シェア事業、タクシー配車事業、生鮮食品のEコマースなど、事業領域をライフスタイル全般に拡大しています。
2018年9月には香港証券取引所に上場。2022年6月時点での時価総額は1496億ドルで、中国テック企業の中でテンセント、アリババグループに続く第3位。「BAT」の「三強」を脅かす存在と目されています。
日本の場合、「ウーバーイーツ」のようなデリバリーサービスで選べる店舗はそう多くありません。特に深夜帯などはぐっと選択肢が狭まります。
しかしメイトゥアンは、チェーン店のような大規模店舗だけでなく、個人で経営している店舗や、店舗がない飲食店(宅配専門店)も登録できるため、店舗数は膨大な数になります。そのうえ各店舗が会員向けに独自のサービスを提供したり、タイムサービスなどで思い切った割引を提示したりするため、選ぶ要素が多いのも特徴です。
日本では、ファミレス、牛丼、ファストフード、ピザなどの大手チェーン店が席巻しています。特に地方に行くと「食べログ」に上がってくる地元のパン、ラーメン店がほとんどですが、中国は店舗数が多いので、一品で攻めてくる多種多様な飲食店が掲載されています。