このランキングシステムは、第1回記事で紹介したカラオケアプリの「チャンバ」にも通じます。しかし、中国は日本とは比較にならないほど飲食店の数が多く、2キロメートル四方でも2000軒超の店舗が出てきます。競合店がひしめく中で上位にランクインされるのは容易なことではありません。
そこでメイトゥアンは、飲食店の稼働率が下がる深夜や、定休日が多い曜日に営業している店舗のランキングが上位に表示される独自のアルゴリズムを構築しました。するとどうなるか。上位にランクインされたいがために、ライバル店の空白の時間を狙って深夜などにオープンする店舗が増えたのです。
デジタルの力で需要と供給をマッチさせる
細かくセグメントされているため、小規模の店舗でも収益性の高い、効果的な広告を打つことができます。そのため稼働率の低くなる空白の時間に、ユーザーを誘導することも可能です。
たとえば、「22時から半額!」と付近のユーザーにプッシュ通知を送ります。「21時くらいに夕食を食べよう」と予定していたならば、「半額になるなら1時間待ってみよう」と思わず誘導されてしまいます。
こうした仕組みを活用し、あらゆる空白を埋めていくのです。しかも店に行かずとも短時間で自宅まで届けてくれる――。24時間すべての時間帯で需要と供給がうまくマッチングされ、「空白が埋まる」仕組みになっています。
ビジネスパーソンに人気の前集金型クーポン
メイトゥアンの強力なアルゴリズムは、先々の「未来」の空白までも埋めようとします。「未来」とはどういうことでしょうか? ここで、スポットの取引ではなく、先々のサービスも含めてバルクで一括購入する「前集金型」のビジネスが台頭しているのです。
たとえば、「管理栄養士が監修した栄養バランスのよい弁当をオフィスまで届けます」というサービスをうたっている飲食店があるとします。その飲食店は、メイトゥアンのアプリを通じて「1カ月分の前金を支払ってくれたら、1食800円のところ600円でご提供します」とプッシュ通知で呼びかけます。この前集金型のクーポンが、都心に出勤するビジネスパーソンに人気となっています。
個人情報を提供する代わりに“お得”が手に入る
あらゆる空白を需要と供給で次々に満たしていくメイトゥアン――。そのマッチングを可能にしているのが、スマートフォンのアプリを通じて収集されたユーザーデータであることはいうまでもありません。
メイトゥアンでは決済システムも自前で保有しているので、個々のユーザーごとに「誰が、いつ、どの時間帯に、どの飲食店を利用したか」というユーザーの消費行動を細かいレベルまで把握することができます。同じ飲食店でも、店内で食事をした情報と、デリバリー注文した情報がバラバラでなく、ユーザーIDを軸に常に同期されています。