こうした取引に関するデータだけでなく、メイトゥアンでは、自転車やバイクで配送する際の路線データまで収集しています。そのデータも日々AIで解析され、「ラストワンマイル」を常に最適化し、配送ルートの精度を磨き上げています。

メイトゥアンは、豊富なユーザーデータを武器に「ほしいものが気軽に見つかり、お得なクーポンで購入でき、短時間で自宅まで届く」という体験価値を生み出すプラットフォームを確立しました。2018年にはスーパー・コンビニ向け配送サービス「美団閃購」、2021年には医療・ヘルスケアサービス「百寿健康」を立ち上げるなど、サービス領域を飲食から生鮮食品、美容、医薬品へと順調に拡大しています。

領域が広がるほど多くのユーザーデータが蓄積され、さらに詳細なユーザーのペルソナを把握できる――メイトゥアンの歩みもまた、世界のプラットフォーマーの勝ち筋そのものといえます。

「中国はサービスが悪い」はもう過去のこと

メイトゥアンを利用すればお得に飲食できますが、それは利用者のデータがプラットフォームに取得されていることでもあります。24時間365日、プラットフォームに監視されているといっても過言ではありません。

成嶋祐介『GAFAも学ぶ! 最先端のテック企業はいま何をしているのか』(東洋経済新報社)
成嶋祐介『GAFAも学ぶ! 最先端のテック企業はいま何をしているのか』(東洋経済新報社)

一方で、利用者はその時の気分や費用感に合った商品、サービスを膨大な店舗の中から自分で選び、見つけ出す喜びを体験することができます。あまりアプリを活用していない人、クーポンの割引率だけ見ている利用者にはプッシュ通知が届き、アプリに選ばされるのです。

利用者の中には、初めて買う人は1個無料、半額などの「初めてサービス」だけを渡り歩く人もいます。そんな中でも、美味しかった、安く買えたなどの成功体験からお気に入りの店舗ができます。過当競争を強いられる店舗側にとっても、少しでも多くの顧客を獲得できるメリットがあるのです。

「中国はサービスが悪い」というイメージを持っている人がまだいるかもしれません。しかしそれはすでに過去のものになりつつあります。態度が悪い配達者、接客が悪い店舗は、アプリを通じて低評価がつけられ、淘汰とうたされます。その結果、サービスの質は全体的に向上しています。

いまではホテルでも出前が取ることができ、高級ホテルの前には出前専用のロッカーがあるほどです。こうしたサービスはコロナ禍で一気に加速しました。日本だと持ち込みNGの概念がありますが、そんなことはもう利用者のニーズの前に消し去られているのです。

メイトゥアンのサービスを見ていると人口が多く、エネルギッシュな中国の今が感じられます。

ホテル前に設置された出前受け取り用ボックス
筆者撮影
ホテル前に設置された出前受け取り用ボックス。デリバリー大国・中国では当たり前の光景になった。
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