ネットショッピングの真似をしても意味がない
独特な迷路型レイアウトに対し、以前は批判もあった。米メディアのVoxは、方向感覚を失うことで衝動買いしやすくなる「グルーエン効果」を生じていたと指摘する。
一方で米インク誌は、オンラインショッピングが当たり前になった現在、人々は実店舗に出掛けてリアルな体験をしたいのだと力説する。「思い起こせば以前は、買い物は楽しいものであった。ひとつのイベントだったのだ」と述べ、その良さを支えていた迷路型レイアウトを自ら絶ったことで、IKEAは失敗したのだとみる。
オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙によると、現CEOのブロディン氏が経営を引き継ぎ、小型店の導入など改革路線を実施。ストックホルムでは小型店舗の新設で、年間来店者数が600万人から900万人に増加するなど華々しい成果を上げた。一方、パリのマドレーヌ店で導入した脱迷路は顧客の不満を招いたなど、古き良きIKEAを愛する熱烈な顧客から不満が出ていた。
実店舗でしか味わえない「迷路」が強みだった
脱・迷路の指針について英フィナンシャル・タイムズ紙は、オンラインショッピングのAmazonやAlibabaを追いかけようとした結果であり、失敗であったと説く。一方で同紙は、オンラインの売上はIKEAの4分の1を占めるようになったなど、オンライン強化には一定の成果があったとも指摘する。
実際のところIKEAのアプリでは、高い検索性や実店舗とのリアルタイムの在庫数の連動などの機能性を、シンプルで洗練されたインターフェースに統合している。ストレスのないオンラインショッピング体験に、かなり本腰を入れて取り組んでいる印象だ。
今後は、アプリではオンラインショッピングの利便性に力を入れつつ、実店舗では懐かしの迷路型レイアウトを堅持する両輪の戦略で、ユニークなショッピング体験を提供してゆくことだろう。
原宿や渋谷などの非迷路型レイアウトにも気軽に立ち寄れる良さがあるが、IKEAのイメージはやはり、丸々半日を費やす迷路体験と深く結びついているようだ。