角を曲がるたびにユニークな商品が目を引く

スウェーデン生まれの家具チェーン・IKEA(イケア)は、顧客自身で組み立てる高品質で低価格、そして洗練されたデザインの家具で知られる。こうした商品自体と同じくらい知名度が高いのが、「迷路型」ともいわれる独特な店舗レイアウトだ。

曲がりくねったショールームを順路通りに歩くこのレイアウトは、まるで実物大のカタログそのものだ。角を曲がるたびにユニークな商品が目を引き、買い物リストはあれよあれよと伸びてゆく。

長大な迷路は思わぬIKEA商品と出会う機会を生み出し、IKEAへ訪れる体験をショッピングからエンターテインメントへと昇華させてきた。豪ニュースサイトのニュー・デイリーは、スーパーが数分を過ごす場所なのに対し、IKEAは数時間を過ごす場所であると述べ、通常の商店とはまったく異なる買い物のスタイルが定着していると指摘する。

IKEAのグローバル・チーフ・デザイナーのマーカス・エングマン氏は同サイトに対し、「店舗のフローや商品の展示のあり方を歴史的に、まるでウォークスルー型のカタログのようにしてきました」とねらいを語る。

この独自の店舗レイアウトに、異変が起きている。2015年頃を契機に、素早く買えるネットショッピングに追随するなどの目的で、迷路型を試験的に順次廃止。ところが顧客は古き良き迷路を愛していたことがわかり、近年また迷路型レイアウトへの揺り戻しを行っているという。

インカグループCEOのジェスパー・ブローディン氏
写真=TT News Agency/時事通信フォト
2023年5月25日、スウェーデンのヨーテボリ郊外にあるデパートに姿を見せるインカグループCEOのジェスパー・ブローディン氏

2015年ごろから「迷路じゃない店舗」にシフト

迷路型レイアウトについては従来、手短に買い物を済ませたい顧客を中心に、余分な時間を費やしているとの批判を受けることがあった。効率が重視される現代、延々と順路を歩かされるのは非効率だとの意見も聞かれる。

こうした批判を受けてIKEAは、2015年頃から順次迷路型を廃止し、自由にショールーム内を歩き回ることができる新レイアウトを世界的に試験導入してきた。商品を素早く買いたい声に応えるほか、店舗で手早く商品を選んで配送カウンターへ向かえるようにすることで、Amazonなど勢いに乗るオンラインショッピング各社に対抗する方針を打ち出した。