「迷宮とおさらば」当初は歓迎されたが、苦戦…

類似のコンセプトは、ヨーロッパ以外にも広がっている。カナダのBNNブルームバーグは2019年、トロントの都市型店舗を取り上げている。カナダ初の小型店となるこの店舗について記事は、「都市部の消費者が、車で長時間移動する必要のない、より身近なスペースを求めている」ことを受け、「まるで家具の迷宮を歩いているような巨大店舗で知られるイケア」が変化し出したことのあらわれだと報じている。

ほか、豪不動産サイトのリアルエステートが報じるように、オーストラリアでもシドニーなどで小型店がオープンしている。アメリカのニューヨークでもクイーンズ区などで小型店が登場した。

クイーンズの店舗は通常店の半分弱に相当する約1万1000m2の広さがあり、迷路型レイアウトとすることも可能だったとみられる。だが、「ニューヨーカーに新しい体験をもたらす」ことを標榜する小型店として、順路のない通常のショールームとした。

ところが、IKEAは「環境の変化」を理由に、オープンから2年と経たずに閉店を発表する。同じニューヨークでは、3番街にある別の店舗も家賃の高さと客足の少なさを理由に閉鎖されるなど、迷路のない小型店は試練を迎えている。

アメリカオレゴン州ポートランドのIKEA
写真=iStock.com/artran
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客はじっくり買い物を楽しみたいと思っている

小型店や脱・迷路型レイアウトの店舗の苦戦とは対照的に、もとの迷路型レイアウトへの回帰を望む声が目立つようになった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は今年8月、「イケアは迷路を撤去した。(だが、)買い物客は迷路の復活を望んだ」と報じている。

IKEAは前述のように、世界各地の都市部を中心に、通常のデパートのように自由に歩き回れるレイアウトを導入した。ふらっと立ち寄り、好きなコーナーだけを見て出て行けるようなデザインだ。

ところが、直販店部門の責任者のオンチュ氏がウォール・ストリート・ジャーナル紙に語ったところによると、客の反応は芳しくなかったという。聞き取り調査やアンケート調査の結果、「例の導き型のストア・デザイン(迷路型レイアウト)」を切望していることが浮き彫りになったという。

フィードバックを受けてIKEAは、都市型店舗も迷路型のレイアウトへ順次改装を進めている。こうした結果、かえって売上も伸びているのだという。