英リサーチ企業のカンター・リテールのアナリストであるレイ・ゴール氏は2018年1月、ブルームバーグに対し、「IKEAは、消費者が車を50キロ走らせてでも、見栄えのするものを安く買うという前提で開発されました」「若者はIKEAは好きだが、車でIKEAに向かうことはできないし、したくない」と述べ、若者やeコマースの利用者に新型店舗は魅力的になるとの見解を示している。
ネットショッピングに追随したのは失敗だった
しかし蓋を開けてみれば、むしろ不満の声の方が大きかったという。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、顧客からの反応が芳しくなく、「買い物客は迷路の復活を望んだ」と報じている。不評を受けてIKEAは現在、非迷路型としてオープンした新店舗を迷路型へ改装するなど、従来のレイアウトへの回帰を進めている。
手軽に利用できるオンラインショッピングは人気だが、すでに独自のショッピング体験を築き上げ成功していたIKEAとしては、オンラインの動向に追随する判断は誤りだったようだ。家族やパートナーと訪れ、入り組んだショールームで思いがけない家具に出会いながら半日を過ごす。そんな従来型のIKEA体験を人々は愛していた。
「ついで買い」を誘う巧みな手法
IKEAでのショッピングはユニークだ。顧客は郊外に立地する巨大な倉庫型店舗を訪れ、まずは2階ショールームを順路に沿って進む。気になったソファに腰掛け、無数のワードローブを開け閉めし、まるで本当に誰かが暮らしていそうなリビングや子供部屋のショールームをくぐり抜けながら、数時間かけて新しい暮らしのアイデアを得る。
IKEAを運営するインカ・グループの直販店部門の責任者、トルガ・オンチュ氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し、たくさんの商品の棚のあいだを進む迷路には、「3週間前に話題に上ったけれど、それっきり忘れてしまった」ものを思い出させる効果があると説明している。「ついで買い」を誘う巧みな手法だ。
インドのエコノミック・タイムズ紙は、現地のIKEAを訪れたある女性の逸話を報じている。ランプ1つを買いに行ったが、ついつい買いすぎ、身長よりも長いレシートを手に店を出ることになったという。記事には実際に身長を超える長さのレシートの写真が掲載されており、ちなみにランプは買い忘れたそうだ、とのオチが付く。