プーチンの期待とは裏腹に中国はしたたかだった
ウクライナ戦争で兵器不足に陥ったロシアは中国の武器援助を切望しているが、訪問団にショイグ国防相ら軍関係者は入っておらず、軍事問題は議題に上らなかったようだ。中国が最初から、軍事協力問題は討議しないと伝えていた可能性がある。
両国の発表をみる限り、習主席が反米連携に同調した形跡もない。
首脳会談は3時間に及んだが、会談内容は公表されず、共同記者会見もなかった。プーチン大統領は単独の会見で、会談内容に関する質問に対し、「完全な機密情報の性質を持つ話もした。生産的で有益だった」とかわした。
ウクライナ戦争のやりとりも不明だ。中国は今年2月、12項目の和平案を発表したが、ロシアは「核兵器の移転」や「核の恫喝」「穀物の安定輸出」などの項目に公然と違反しており、平行線だったとみられる。
モスクワ・タイムズ紙は、「ロシア代表団は、期待していた大型のエネルギーや農業の取引なしに帰国した」とし、具体的な成果に結びつかなかったとする代表団筋の発言を伝えた。中国側はしたたかで、ロシアの期待は空回りに終わったようだ。
クレムリン当局者は「テレビ局に指示している」
それでも、ロシアの国営メディアは、プーチン大統領が北京で大歓迎を受けたと大々的に報じ、「習主席はプーチン大統領を最初に歓迎宴に招待し、到着時にはレッドカーペットが敷かれ、一挙手一投足に注目が集まった」などと強調。ラブロフ外相は「会場でのプーチン大統領の演説は熱狂的に受け止められた」と記者団に語った。
クレムリン当局者は同紙に対し、「プーチン大統領が世界的リーダーであることを国民に想起させる観点で報道するよう、テレビ局に指示している」と検閲を明かした。
大統領が旧ソ連圏以外を外遊するのは、3月に国際刑事裁判所(ICC)から、ウクライナの子供連れ去りで逮捕状を請求されて以来初めて。久々の外遊でスポットライトを浴び、来年3月の大統領選を前に、外交活動に支障がないことを国民に示す狙いがある。
しかし、実際にはプーチン大統領の演説中、空席が目立った。前回のフォーラムでは、参加国代表が一堂に会する円卓会議が開かれたが、今回はプーチン大統領との同席を嫌がる国が多く、開催されなかったという。
中国は反米パートナーである同大統領を厚遇しながら、侵略戦争を進めるロシアと距離を置き、肩入れを避けようとしたようだ。