どうすれば二国家共存体制が構築できるか
現下の政治情勢で、イスラエルは二国家共存体制の構築に誠意がないし、アメリカも停戦を求めたり、ユダヤ入植地の拡大非難の国連決議に拒否権を発動したりと、和平に向けて非建設的だ。イスラエルが力を恃んで、さらに支配を拡大・強化することは許されない。
欧州諸国、とくにドイツは国内の極右勢力の伸長を抑えるために反ユダヤ主義否定を看板にして、パレスティナの人々の正当な権利主張を軽視している。
このまま歴史が推移したら、何十年後か何世紀後か知らないが、イスラエル国家が生き残れず、「第二のディアスポラ」が起きる可能性も相当に大きい。イスラムの人口比は世界的に拡大中だから時間はイスラムの味方だ。
望ましい未来は、イスラエルがパレスティナの人々の権利を侵害したことを認め、その被害を償う意思を明確にし、二国家共存体制を、パレスティナ人に有利な形で構築することである。
白豪主義の過去を持つオーストラリアも変化
私はそれは、可能だと思う。最近、オーストラリアで、全国民の約4%を占める先住民の政治的権利を拡大するための計画について国民投票が行われた。先住民を憲法に明記し、政府に助言する先住民機関を創設する内容で、賛成派と反対派が議論を繰り広げた結果、反対多数で否決された。
この計画は逆差別だとか、先住民に拒否権を与えて国家統一を危うくするなどの懸念があったから否決されるのは当然だった。ただ、南アフリカのアパルトヘイトが廃止された後も、白豪主義の牙城として過去の反省がなかったオーストラリア人の考え方が、4半世紀ほどの短い期間に急速に変化したことは、歴史を知る者としては感慨深い。
オーストラリアでは先住民を絶滅寸前まで追い込み、子どもを親から奪って「文明人」として教育する事業が近年までされるなど、悪質性が際立っていた(逆にいうとオーストラリア人の反省を、一般的な先住民の権利拡大の模範例とするのは間違いだ)。
今回のハマス・イスラエル紛争に対する欧米の反応は、各国政府がイスラエル支持に傾きすぎという印象がある一方、パレスティナ人に対する不公平な対応を反省する動きが生まれているように見えるのはひとつの希望だ。