援助関係にあったイスラエルとハマスが衝突

イスラエルのネタニヤフ現首相は歴代首相のなかでも特に非宥和派で、ヨルダン川西岸に新しいユダヤ入植地を建設し、神殿の丘でのユダヤ教過激派の蛮行を許すなど、イスラエルとパレスティナの共存を拒否したがっている。

イスラム組織ハマスは元来、ガザの社会福祉団体だったが政治・軍事化し、21世紀初頭にテロを繰り返した。2006年の総選挙で大勝し、いったん政府を組織したものの、イスラエルやアメリカにより排除され、ガザ地区を実効支配下において穏健派のアッバスPLO議長の自治政府に対抗している。シーア派のイランと違いスンニ派だが、イランと協力関係にある。

なお、ハマスはイスラエルの援助で力を付け、PLO主流派(ファハタ)への対抗勢力として利用されているといわれてきたが、過激化したのでイスラエルは殲滅を狙っている。その中で発生したのが、10月7日のハマスの奇襲攻撃を発端とする軍事衝突だ。

イスラエルがガザ地区を支配することは許されない

今回のハマスによるイスラエルへのテロ行為は、たとえネタニヤフ政権が不当であっても許されないのは当然だ。イスラエルに報復する権利もあるが、被害とバランスの取れたものであること、人道上の配慮が必須であることは大前提である。ガザ地区をイスラエルが支配することは、パレスティナの自治を含めた和平合意を否定することを意味するので絶対に避けるべきである。

本来は、他民族の土地に国を創るなど国際法上も許されるはずないが、欧米や当時のソ連までもが組んで、国連が土地をイスラエルに与え、1950年には国連加盟を認めたことで、イスラエルは国際法的な裏付けを得た。

また、1993年のオスロ合意でイスラエルとパレスティナの二国家共存で合意しており、イスラエル国家の国際法秩序における正統性の裏付けとなっているので、もともとおかしな話だが、現時点では、イスラエルの存在を国際法的に認めるしかない。

また、パレスティナも一筋縄ではないことが事態をややこしくしている。自治政府は民主的に選ばれたものでなく、多数派であるハマスはこれに同意していない(もっともハマスはイスラエル国家を認めてないが、すべての話し合いを拒否しているわけではない)。