反アメリカ感情が「第二の9・11」を生む

アメリカが国連安保理で拒否権を行使したのは過去に83回。そのうち45回がイスラエル絡みだ。今回の拒否権行使も、「アメリカはイスラエルの地上侵攻を容認した」と受け止められ、それがトリガーとなって、戦火の拡大を招くことになる。

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イスラエル軍による報復が本格化し、ハマスが支配するガザの病院が空爆されたように(イスラエルは否定しているが)、一般市民が犠牲となるといった出来事が続けば、アラブの人々の中にくすぶる「反イスラエル・反アメリカ感情」に火がつく。

そこにハマス側の「蜂起しよう」という呼びかけが加われば、デモにとどまらずテロへと発展してしまう。そうなると、アメリカと共同歩調をとる全ての国々で、あの忌まわしい「9・11テロ」が再現される危険性も捨てきれなくなる。

いずれにしても、緊張が中東全域に拡がることは間違いない。すでに、イスラエルとサウジアラビアとの間で醸成されつつあった関係正常化の動きは頓挫し、サウジアラビアによる原油減産の規模縮小への期待も遠のいている。

イラン制裁によって原油高、円安が加速

この先、アメリカが、ハマスの背後にいるとみられるイランの原油生産と輸出に制裁を科すようであれば、原油高に一段と拍車がかかることになる。

原油高が進めば、当然ながら為替相場にも影響が及ぶ。かつては、原油高とドルは真逆の相関関係(原油高ならドル安、原油安ならドル高)だったのが、近ごろでは、連動する現象が続いているため、原油高になればドルも高くなって、円はますます弱くなっていくことになるだろう。

その意味では、アメリカの動きは日本にとって好ましくない要素が多いのだが、リスクは他にもある。それは中国の動きである。

10月7日、ハマスがイスラエルに奇襲攻撃をかけたことを、中国の習近平総書記は「これは面白いことになった」ととらえているのではないだろうか。

表面的には、ロシアとウクライナの戦争と同様、中立を貫いているものの、元はと言えば、ハマスとイスラエルとの戦いの火種を作ったのは中国だからである。