習金平による独裁政治はさらに進んでいる
「中国は今、国内経済が低迷し、若者の失業者も多く大変な状況。台湾侵攻よりも国内の引き締めが先。2027年の中国軍建軍100周年と自身の総書記4選がかかる党大会を控え、勝てると断言できない戦争に踏み切るとは考えにくい」
中国に関する取材をしていると、このような見方をする識者に出会うことがある。確かに、今夏以降、秦剛氏が外相を解任され、李尚福国防相も失踪し、国内経済では、恒大集団に続いて碧桂園と中国不動産大手が相次いで苦境にあえいでいる現状を思えば、「政治と経済の立て直しが優先」との見方も一理ある。
ただ、ロシアやハマスの動きからヒントは出揃った。国内的にも、9月28日、国慶節=建国記念日の祝賀式典で、通常であれば、李強首相が演説するところを習近平総書記自身が行ったり、10月18日、北京での「一帯一路」国際会議で、構想の成功を高らかに主張したりしたあたりからは、体制の揺らぎは見えない。むしろ、習近平総書記を皇帝とする「宮廷政治」が進んでいるかのような印象も受ける。
「台湾有事は2024~25年に起こり得る」
こうした中、トランプ前政権下で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたロバート・オブライエン氏は、「台湾有事は1~2年以内に起こり得る」との見方を示している。
10月4日、訪米した木原防衛相が、オースティン国防相との間で、新型のトマホーク「ブロック5」ではなく、やや性能が劣る旧型の「ブロック4」でいいからと同意を取り付けてきたこと、あるいは、松野官房長官が10月17日、熊本県を訪問し、蒲島知事に、台湾有事を想定して沖縄県の住民らの避難先確保を要請したことなども、中国の台湾侵攻が早まる可能性を示唆するものと言えるだろう。
このように考えると、ハマスとイスラエルの戦闘は対岸の火事とは言えなくなる。筆者は近く、学生たちにこんな話をしようと思う。読者の皆さんにも、身に降りかかってくるかもしれない問題として理解していただけたらありがたい。