ひとくくりにできないほどバラバラな「ネイティヴ英語」

一口に「英語」と言っても、米国・カナダ・英国・オーストラリア・ニュージーランド・インド・シンガポール・南アフリカ英語など、様々な変種があります。また、日本語にも方言があるように、同じ国内でも多くの異なる英語があります。そのため、母語話者同士でも誤解が生じるのは珍しくありません。

発音だけでなく、語彙ごいの違いが原因で誤解が生まれることもあります。例えば、「消しゴム」のことを米国ではeraserと言いますが、英国やニュージーランドではrubberと言います。ニュージーランドの学校に通っていたアメリカ人の生徒が、クラスメイトからHave you got a rubber?(rubber持ってる?)ときかれて、困惑したという話を聞いたことがあります。rubberには「(ゴムで出来た)避妊具」という意味もあるからです。

このように、発音や語彙の違いにより、母語話者同士でも誤解が生じることは珍しくありません。皆さんも、同じ日本語で話しているのに意思疎通がうまくいかなかった経験をされたことがあるのではないでしょうか。ですから、母語話者を神格化し、「ネイティヴのように英語を話せれば、何不自由なくコミュニケーションがとれるのに」と母語話者を目指すことにあまり意味はないでしょう。

写真=iStock.com/Giuseppe Lombardo
※写真はイメージです

大多数の英語学習者は母語話者レベルを目指す必要はない

「英語圏でスパイとして働きたいので、日本人であることがばれるとまずい」といった特別な事情があるのであれば、母語話者を目標にしても良いでしょう。それ以外の大多数の学習者は、母語話者レベルを目指す必要はありません。

中田達也『最新の第二言語習得研究に基づく 究極の英語学習法』(KADOKAWA)

Never make fun of someone who speaks broken English. It means they know another language.(片言の英語を話す人を馬鹿にしてはいけない。彼らは別の言語が話せるということだから)という名言もあります。自分のことを「英語が不十分にしか使えない非母語話者」ではなく、「日本語に加えて英語も使用できる複数言語使用者」とポジティブにとらえましょう。

なお、「母語話者」(native speakers)や「非母語話者」(non-native speakers)という用語には差別的なニュアンスがあるため、代わりに英語の「第一言語使用者」(L1 users)や「第X言語使用者」(LX users)などの用語を使うべきだという意見もあります。問題が指摘されていることも事実ですが、ここでは便宜上「母語話者」「非母語話者」という用語を用いました。

関連記事
だからトヨタ社員はすべてを「紙1枚」にまとめられる…ダラダラ話す癖が一瞬で治る「4×4の枠」の使い方
「お世話になります」は絶対に言ってはいけない…リクルート全国1位の営業が説く「電話で使える鉄板トーク」
LINEで「、」や「。」を使うと「怒っている」と思われる…オトナたちがまったく知らない若者世代のLINE常識
なぜ孫正義社長は「すぐ電話をかけてくる」のか…仕事がデキる人がメールより電話を多用する本当の理由
「今から行くから待ってろコラ!」電話のあと本当に来社したモンスタークレーマーを撃退した意外なひと言