海外でも通用する英語力とはどんなものか。立教大学異文化コミュニケーション学部の中田達也教授は「ネイティヴ・スピーカー並みに話せるようになることに憧れる人は多いが、その必要はない。世界では外国語として英語を話す人のほうが、母語として話す人よりもはるかに多い」という――。
※本稿は、中田達也『最新の第二言語習得研究に基づく 究極の英語学習法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
ネイティヴだから教えられるとは限らない
「ネイティヴ・スピーカー講師から授業が受けられる」ことを売りにした英会話スクールは多くみられます。その背景にあるのは、「英語はネイティヴ・スピーカーに習った方が良い」という信念でしょう。しかし、これまでの研究をふまえると、そのような信念は必ずしも正しくないようです。
その最大の理由は、母語話者であるからといって、その言語についてうまく説明できるとは限らないことです。専門的な話になりますが、言語に関する知識は、「宣言的知識」(declarative knowledge)と「手続き的知識」(procedural knowledge)とに分けられます。宣言的知識とは、言葉で説明できる知識のことです。例えば、「複数形の名詞を作るには、単数形の語尾に-sをつける」などの知識は、宣言的知識の一種です。一方で、手続き的知識とは、実際に何かができることを指します。例えば、英作文で複数形の名詞を実際に使える場合、この文法事項に関する手続き的知識があると言えます。